2015-08-07 イヴの夜に Glenn Gould- Bach's Piano Concerto No.1 http://www.youtube.com/watch?v=J6uqD_D07PU ふと、久しく手に取らなかったグレン・グールドのCDBOXからこのCDを聴いた。 イヴの夜。 といっても私は無宗教なので彼らの感慨は持ち得ないがバッハという宗教音楽家の残してくれた音楽には強く心が共振する。 『クリスマス・キャロル』 冷酷でエゴイスト、守銭奴の主人公スクルージが霊の導きによって己の悲惨な人生を悟り、善に覚醒するというチャールズ・ディケンズの代表作の一つである。 この小説、或いはその映画を原発推進派諸氏に読んでもらいたいものであるが、残念ながら彼らにはスクルージの爪の垢程の覚醒の善もないだろう。 イヴの夜。 昔々、イヴとは女性の名だと思い込んでいたことがあった。 はや年が改まろうというこの冬の夜にバッハを聴いた。 レコード盤はアンプの故障のまま聴けずに放ったらかし、というよりこの一年レコード盤を取り出してプレイヤーにかけて聴くという余裕が実は無かった。 余裕も気の持ちよう。 加えて退職したのだから十分に余裕は持てるはずだったし、また旅行も何度か行ったのだが・・・ 静かなイヴの夜。 今晩はクリスマスソングよりバッハがいい。 グールドという演奏会嫌いの天才の演奏が聴けるというのは全く技術の進歩のおかげである。 ピアノの音が一つ一つ 命の鼓動のように跳躍し 沈潜し 冬枯れの野を山を吹き渡る風のように歌う。 すさまじく吹き渡るらん木枯らしに 垂水の音ぞ耳澄ませばや 散り敷いた紅葉もすっかり色あせているが、庭の睡蓮鉢に張った薄氷の下に眠っている鯉の太郎と花子も耳を澄ませているに違いない。 微睡みの冬の季節に優しく抱かれながら