2015-08-07 満月愛隣 ・ 1 満月が森を明るく照らし 余りに明るいので星林も隠れてしまった。 真夏の熱波も和らいで 蝉も静かに木々に息を吐き 時折ニャン! 茂みの下から白いハチが此方に駆け寄ってくる。 2 満月 Blue Moon Blue Moon 見事な満月の夜 おまえもその光を浴びているだろうか もう寝たか 3 塵埃に烟る町の真ん中を貫くチンチン電車の線路も Blue Moon Blue Moon 濡れるように輝いているだろうか 愛隣 いいじゃないか、その響き Blue Moon あいりん、などと書くなよ意味が消えるよ役人さん なに スラムとぬかすか中流君 よく目を見開いて見上げてみな Blue Moon スラムと抜かす奴の顔は歪んでいる ディープスポットと呼ぶ奴の顔は死んでいる フルムーンという気色の悪い造語が蔓延し お目出度いのがうつつを抜かす 同じだな 半端に生きる奴にBlue Moonを見上げることは出来ない 政治屋が見向きもせず 役人は冷笑し 塵埃に烟る夜の町の真ん中を 老犬が悠々と歩き去る 風が塵埃を巻き上げ 驟雨が降りしきっても 涙がでるような安看板がガタガタ軋もうが 薄暗い町並みが肩を寄せ合うように縮まっていようが 油の匂いや生ごみの匂いが風に染みていようが 女よ 蓮っ葉な女と蔑まれながら生き抜く女よ 蓮の葉は仏の花を咲かせる 歯の欠けた皺くちゃの爺さんも 刺青のあんちゃんも 腹が減ったとホテルマンに凄むあんちゃんや 気まぐれ行きずりの私も 仏の前には額ずくのだよ 塵埃の風に吹かれ歩く女よ 愛隣の街 炊き出しの街 Blue Moonの街 4 私は遠くその匂いをかぐ 森はゆっくり風に応えて満月の光を散らし ハチはニャンニャン擦り寄って 白い身体は光に輝く おまえもその光を浴びているだろうか もう寝ただろうか ゆっくりおやすみ おまえの頭上を 満月はゆっくり西に傾いていく 光を精一杯注ぎながら大地は輝く。 ・ 注 Blue Moonとはひと月に2度現れる満月 稀なる美しい花のシンボル 写真 月下美人(これは2年前撮影)