pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

五月の夜の雨あがりの月に

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            1

五月の夜の雨あがりの月に
はぐれし雲の一切れの寄り添うや
森の木々の雫は輝く明るき道に
奥武蔵の風の水の匂いの満ちたる深更の
しずかに時は止まる


            2

「タンゴはセックスよ」
「そうか、そうならば、いかなる舞踊もまたセックスだな」

そうは言ってみたが
あらゆる芸術も音楽も舞踊も文学も根源は性にあるといわねばならない。
その性が究極を目指す果てが芸術であり音楽であり舞踊や文学だ。

その果てに、美を目指す
その美が目指すのは苦悩の果ての歓喜だ
大いなる歓喜は大いなる苦悩の果て
おのが内の外の醜悪を凝視した挙句の死を
完成した美を目指す

だからタンゴも極めた舞踊家の踊りは美しい
こんな美しいセックスがあればいいね

その目指した美は死はどこに向かうか
夢だ
だからこそ
夢は生そのものなのだ
性そのものなのだ

忘れたのか
死の直前に見る夢を
千年前の死の夢を
オルフェウスの夢を
小侍従の夢を
ブエンディア一族の夢
グリゴーリー・メレホフの夢を
消えていった無数の夢を

あなたの立つ地面の下の無数の死を
忘れたのか
76歳の元娼婦マリアの死を
忘れたのか


            3

しずかに森は息を吐く
はぐれた雲も消えていった

煌々たる月影の照らす大地への追憶
煙草の一筋の煙るに如かず





アルゼンチンタンゴ
  かの国ではタンゴは国の誇り。下手に踊ると叱られる
  そうです^^。
  まさに、様式美の舞踊です。