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不条理というものは、世界のあらゆるところに存在する人間固有の本質でありすべてである。各人の出自(出生)から人生を生きるに伴うその無数の中での出会い、偶然と必然。属性。その最大のものは生死にかかわる不条理である。その病や争い。さらに外延としての不条理に於いてその最大のものは悪としての疫病の蔓延であり戦争である。『ペスト』においてその2つが暗喩として重ねられた。
「しかし、あなたの勝利はつねに一時的なものですね。ただそれだけですよ」 タル―
「つねにね、それは知っています。それだからって、戦いをやめる理由にはなりません」 リウー
「このペストがあなたにとってはたしてどういうものになるか」 タル―
「際限なく続く敗北です」 リウー
ペストに立ち向かうリウーは敗北を認めながら戦うことを止めない。
さて、潔く・・・負けを認め戦いを放棄するのが良いか否か。
放棄したくなるのが普通であろう。
尤も日本人は戦いすら始めから放棄しているのではないのか。
まことに不条理。
戦うことすら忘れているか、または戦うことそのものを知らないのではないか・・・
これも惨めな不条理。
他人にやらせればよいというのが、威勢の良いネトウヨ諸君であり、煽るマスコミや政治家はもとより貧しい国民にやらせればよいだけであろう。
最悪の不条理。
?へんな文脈であるが、リウーにおいてそもそもペストに喩えられる不条理とは戦うべき悪であった。
「際限なく続く敗北です」
戦う限り続く敗北。
引き続きタル―が問う。
「誰が教えてくれたんです。そんないろんなことを」
「貧乏がね」
貧乏とは学びの場であり、空間に於ける事物や人間との出会いであったのだ。ほんとうの学びがここにある。
映画『涙するまで、生きる』
https://www.youtube.com/watch?v=77G5AmsL9xQ
カミュ未完の遺作を映画化した『最初の人間』
https://eiga.com/news/20120927/11/
の二作がすでにこの言葉「貧乏がね」に集約されている気がする。美しい。涙があふれるほど美しい。
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