昨日、歌会参加。
歌誌中、参加者の掲載歌から、それぞれが2首選び寸評を言い合うやり方です。
1 柿の実の熟すをま近に見てをればつくつく法師のひとり鳴きけり
「叙景が分かりやすい。景が見える」
3 降りしきる秋霖の夜のひとり寝に暗渠の音のはげしきをきく
「淋しさを強く感じる。暗渠、がいい」
4 雨やみて霧に沈みぬ林にはかっこうの声とほくこだます
「このような叙景は深く感じられる。
5 残照の消失点に突き進む信濃追分晩秋の鉄路
「いい」
6 優しきは耐えがたきあり堀辰雄そは死と戯れしほどに強きか
「堀辰雄への思いを感じる」
7 我ともに老いてゆきけり秋の朝眠る白猫息やすらけし
「我とともに、とすべき」
「白猫に艶めかしさを感じる」
8 白釉の円き素肌のひんやりと花の熱きも湛えてありなむ
「実感がある」「不思議さを感じる」
10 求めきて花うるはしみ頂にましろき雲の湧きいづるかな
13 尋ぬればきみ振り向きてわれにいふ吾亦紅とは高原のひと
「吾亦紅、好きです」
14 木々の葉の降りしきるごと告げたしや六道を迷ふ影のわれゆゑ
「六道をまよふ、の意味が深い」
15 子殺しのさきはふ国のまなこらは闇に隠れぬ冬ごもりをり
「闇に隠れぬ、のその隠れた扉を開けてください」
全体で「3、6、8のなかの「き」の使い方は?」
以上の趣旨の寸評を頂きました。また歌誌での編者の寸評は、8番の歌で
「ロマンと官能性を湛えた歌が持ち味だろうか」と頂きました。
自分としては特に、14番の「六道」、これは死後ではなく現実への認識であることを敢えてお伝えしました。六道すべて。
また、15番については突っ込みませんでしたが、その子殺しの闇を短歌として「出した」わけです。つまり、表に引きづり出したと考えています。そこには社会や国家のありようの全ての問題が見えるはずです。さらに言えば国民の問題。毎年小学生が数十人自殺。虐待死は含まれませんし、病死も含まれない数字です。小学生が自殺することにも慣れて鈍感になった国。
全体での「き」の用い方については、続く語の省略法であることをお伝えしましましたが・・・ご納得頂けたかどうか・・・
私としては10の
求めきて花うるはしみ頂にましろき雲の湧きいづるかな
これがゼロ票だったのが意外でした。
実は自分ではこれは外せない好きな歌だったので。
まあ、下手の歌なので仕方ありません。
私の歌への接近はまだ10年もありません。
しかも即興、気まぐれでは上達は見込めませんが下手の横好き、下手の考え休むに似たりながら続いています。歌会に加入したのはそんな気楽すぎる自分に少しはタガを掛けようという、殊勝な了見によるものです。
ただ、私はえり好みが結構強く、歌と言えば私には西行や定家、小侍従や式子内親王などに強く惹かれています。特に西行の「心澄む」という世界は憧れですが、過酷悲惨な時代に最高峰の仏道修行と歌道を成し遂げた西行の世界は大事にとっておき、私は字面としての「心澄む」を矮小な自分なりに持ちたいだけです。