pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

星祭

生憎の雨天。
ただし、新暦に拘らなければ本来の旧暦すなわち月遅れで見て良いのだ。わざわざ梅雨にやる理由は無い。牽牛織姫を雨で泣かしてねえ。仙台七夕は月遅れ。正解。

更に言えば、俳句の季語としては秋であるからややこしい。旧暦と新暦は季語に深刻な災いをもたらし、加えて気候の異常が俳句の季節性を混乱させて、無季語俳句が増える道理にもなっている。

なんて、まぁどうでも良い。
俳句も己が楽しめれば良い。下手の横好き。

ところで、掲題の「星祭」、良いですね。語感といいイメージが豊かな言葉です。
星祭で思い出すのは宮沢賢治
他に無い。
銀河鉄道の夜』は童話でありながら壮大な物語です。敢えて小説とは呼びません。
近代以後の日本文学が生んだ最高の作品で、これ一冊が存在してくれたお陰で世界に日本の近代文化を誇れうる訳です。宮沢賢治の人生と共に。

昔、私が現役の頃、と言っても30年近く前の話なので、暴露しても時効。
ある「進学校」(いやですねえ、この響き)に勤務していた時に教育実習生が私の指導下に入りました。どうも態度がでかい。生意気。傲慢。それで私に回されたんだと了解。一つ懲らしめんとな。という訳で、教科書掲載の『銀河鉄道の夜』をやらせました。

毎時の指導案を事前に提出させるのですが、授業3時間目でギブアップ、泣きついて来ました。彼の大学の指導教官もどうやらギブアップしたというのです。その『銀河鉄道の夜』に8時間与えていたのですが、そこからは私が助言しながら進めさせました。もちろん、一部の助言で、本人に考えさせながらです。彼は頭を抱えながら、何とか最終授業までこぎつけました。しかし、その、まとめとなる最終授業で完全にギブアップ。ま、いいか。じゃあ俺がやるからね。という訳で私が最終授業を展開しました。

生徒たち全員に読後感として一番心に残った言葉を順に挙げさせて板書していきます。45名、順番が後になるほど苦しくなりますがフォローして終了。黒板には45個の生徒が作品に発見した語彙がテキトウに散りばめられました。愛、哀しみ、自己犠牲、夢、貧しさ、葛藤、嘆き……

私は黒板中に散りばめられた語彙を一つ一つマスで囲み、他の語彙とレールで繋いで行きました。すると、そこに、『銀河鉄道の夜』のもう一つの姿、宮沢賢治の描きたかった全ての「モラル」や思想、美意識などが銀河鉄道の夜のレールに乗って現れる訳です。


さすがによく頑張った生徒たち。出来上がった板書を見つめながら生徒たちは感動していました。ここまで辿り着いたのも実習生のお陰。実習生は素直に喜んでいました。
実習終了後の職員室での本人の挨拶で
「巴琴先生のお陰で体重が激減しました」と、相変わらずなヘラヘラが戻りました。

銀河鉄道の夜』…巷には様々な解釈本が溢れかえっていますが、どうでも宜しい。

実は生徒たちは宮沢賢治の苦難の人生を含めて作品を2週間じっくり読み込み十分な鑑賞が出来たのです。
宮沢賢治の途方もないイメージ力、宝石のような絢爛たる語彙と表現力、それら全ての上に描かれた宗教的でさえある美的宇宙。感動が全てです。

如何ですか、『銀河鉄道の夜』、童心に帰ってまた読んで見ませんか?


七夕から星祭、宮沢賢治へと話が広がりました。
「星祭」のキーワードを与えて下さった趣味人のお気に入りさんへ感謝申し上げます。

あ、思い出しました。今月の句会の掲題は「七夕」でした。



星祭梅雨の雲の上にあり

催涙雨降りて止まずや奥武蔵




・動画
宮沢賢治 「星めぐりの歌
https://youtu.be/q0gQSKKjh9M