pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

広島長崎 連詩改稿再掲

 青空


大きな音が響いた。

子象は目の前で砂塵を巻き上げて倒れたお母さんを見た。
一緒に草を食べていたお母さんが頭から血を流して倒れているのを見た。
次の瞬間、子象は草原がクルリと回ったのを見た。
サバンナの緑が風に揺れるているのを見た。
静かに閉じていく子象の目に青空が映っていた。





     楡の木と青空


彼が消えた

忽然と夏の石畳の舗道から消えた
陽炎のゆらゆら視界を邪魔する中で
一瞬の閃光に飲まれて
消えた

疎開先で彼女は慟哭したがせんなきもの
しかし、彼が消えたとき
閃光は石畳の上に影を忘れて
影は刻まれた
石の上に

それから百年
幾千万の靴に踏みつけられながら
石は影を残しまだ耐えていたが
千年たった時にとうとうつぶやいた
もうこれ以上すり減っちゃ俺も消えてしまう
そして消えた

楡の葉がざわめき
青空は悲しんだ
俺たちは待ってたんだ
お前が戻ってきて自分の影を拾うのを


また千年が過ぎ去ったある夏の日
白い窓辺にオレンジが置かれ
窓の向こうに青い海が輝いていた
青いテーブルの上に置かれたガラスの花瓶に海が映っていた

部屋に駆け込んできた少女が見たものは
遠い昔の海の底に転がる影のしみた石ころだったが
少女には透き通った花瓶にしか見えなかった
少女はオレンジをポケットに入れると飛び出していった
白いレースのカーテンがふわりと風にそよいでいた

青空が微笑んでいた
それでよい
楡の木もうなずいた

少女の影に彼の影が重なったのを見届けたのだった
待っていた甲斐があったなと青空がつぶやいた
そうさ、待っていれば必ず顕れるのさと楡は答えた

俺も何十代めかの楡の木だがと楡はつぶやいた
そろそろ俺も消えるのさと楡は笑った

楡の葉がざわめき
青空は悲しんだ





・動画、好きな曲です。


8月6日9日は特別な日です。記念という言葉を文字の意味を理解するなら祈りとしての祈念の日であり、行事の日ではありません。人類最大の蛮行のひとつとして、その犠牲を悼むなら日々の我らが蛮行愚行の結果であることを見つめなければなりません。
つまり8月6日8月9日は日常です。
また、生物の種が急速に絶滅しています。人類だけが生き延びるなどありえませんし、人類だけが生き延びても無意味です。