pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

夜汽車






郷里も昔は今より雪が多かったのだろう。

木造の駅舎の周囲は雪に埋まりプラットフォームにも雪が吹き込んでいた。
汽車であった。

つるりと塗装された木の座席に車内灯の橙色が照り返していた。
窓の下に蜜柑が輝いていた。売り子さんから窓を開けて買ってもらったものであった。


おそらく、というのも記憶が不確かでおぼろげに浮かぶだけだが、それは父の船会社への再就職のために大阪へ旅だった時のはずである。汽車に乗った記憶の初めである。とすれば4才ころか。

夜汽車の重い車輪の響きが汽笛とともに耳に残っている。


    轟音をたてて走りぬ夜汽車ゆゑ
          闇は叫びぬ明日を呼ばんと


ものみなが生気を発散し子の私を鷲掴みにしていた頃のお話。