pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

『バッカス・レディ』ユン・ヨジョン


前回満席で見逃した『バッカス・レディ』を今日観てきました。『空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~』も素晴らしい作品でしたが、今回も素晴らしい。やはり満席、どころか立ち見が出ました。


ユン・ヨジョンという韓国の大女優の凄さを観て圧倒されました。

作品のテーマは現代韓国の抱える高齢化社会と底辺の社会の深刻な問題ですが、そのまま日本に当てはまります。

脳梗塞による全身麻痺で病院で介護されながら、プライド喪失で絶望的に生きる老人や、認知症で引きこもりとなり、記憶力が衰弱していく自分に愛想を尽かす老人、妻子に先立たれた老人、それぞれが深い孤独と絶望に直面し、死を渇望しています。そこに、高齢者相手に売春して生きる主人公のソヨンが絡んでいきます。ソヨンは、また、韓国に流入するアジア人の幼い息子を助けたりしています。彼女の住む家はシェアハウスで、さまざまな底辺で生きる人たちが居ます。

南北問題、朝鮮戦争などから現代に至る韓国の持つ社会・歴史的な視点がきっちりと描かれながら、奥深い人間の群像がドラマとして掘り下げられた、これはまた素晴らしい映画を観る事ができました。尹東柱と併せて、忘れられない作品となりました。

そして、ソヨンを演じるユン・ヨジョン…

日本にも大女優と呼ばれる女優は何人も居ますが、ユン・ヨジョンの演技力に匹敵する女優は樹木希林らを思い浮かべますが、どうでしょうね。この『バッカス・レディ』をご覧になった方のご感想をお聞きしたいものです。

余り具体的に書くと、これからご覧になる方の妨げになりますから、これ以上述べませんが、
ユン・ヨジョンの、ラスト近くで出した表情は人間の持つ全ての美しい情感を表現しています。わずか数秒の間です。こんな表情表現を私は見た事がない。
 美しさとはこのような表現なのだと思い知りました。
 この数秒間の、人間の持つ複雑で深い、美しい全ての情感を表現した表情を観る事ができたのは幸運です。
 ほんの数作品しか韓国映画を観ていないという自分がこのような事を申すのは不遜というより、愚か極まるのですが、敢えて書いた次第です。おそらく、ユン・ヨジョンの沢山の作品の中でも、こんな表情を表現しているのは無いのではないかと、思わせる作品です。


たかが映画、されど映画。たかが文化、されど文化。日本と韓国の文化交流が映画などを通して進んで行けば、反韓に踊らされる愚かさに気づくでしょう。しかし、文系は要らないと公言する首相の国だから無理か。しかし逆に見れば、文系に、このような映画に、深い楽しみを見出し感動できる事は、まさに特権的な喜びと言えるでしょうか。いやあ、良かった良かった^_^


「では、サヨナラ!サヨナラ!サヨナラ!」