pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

哀しみは優しき人の春近し

 


学習指導で、自分の言葉(文字)と、その言葉に合う絵を一枚の画用紙に描きこむ目標で取り組んでいる。それは精神の自由をその作業を通して子どもたちに感じてほしいからである。


「画用紙という枠、制限はあるが、自分の表現したい言葉を書きなさい。自由に、文字の形も作りなさい。他人が読めなくても良い。自分の文字を自由に作ること。また、絵も同様、他人から見て分からなくて良い」

これは実は大変難しい。
自分の言葉、自分の文字、自分の絵を創作するのだから。
しかし、あらゆる意味で自由を抑圧された子どもたちは精神の萎縮が甚だしい。それを短い時間、日数で成し遂げさせる。また、いつ退所するか分からない中である。監視もある。更に、子どもたちの学習で出たプリント類から何から成果物は全てファイリングし、作業所上がりの熱心な「係長」が目を通したあとにシュレッダーにかけるのである。まことに念の入った事である。まぁ私は全てファイリングせず自分が保管している。文句は言わせない。だから、子どもたちの作文も今回の作品も保管する。

そんな訳で学習に入ったが、固くなった子どもたちに「自由」の手本がほしい。そこで、知り合いを通して表題の前衛芸術家である池田龍雄先生に知遇を得て、彼の実物の作品を拝借して子どもたちに見せたいと思い立った。

思い立つと即実行するのが私の性格であり、それが私の今までの失敗にも成功にもつながっているのだが、何せ池田先生にも全く面識も無い。

思い立ったのが今日の朝、そのまま電車に乗った。
アポ無し紹介も無し。

 

「分かりました。私の作品がそのような事のお役に立てるなら結構です」

 

元特攻隊員だった先生は即断してくれた。
なんと嬉しいことであったことか。
初対面の、紹介も何もない、突如現れて拝借を願った男を信用してくれたのである。

それは個展に出すための下描きのものである。
『いろはに 位相』というタイトルでの連作のうち4枚拝借した。

「文字も自由に描いて下さい」その見事な手本である。

既に前衛芸術の大家である先生は敗戦後、一貫して平和主義を通して活動もなさっておられる。そして岡本太郎安部公房らと「アヴァンギャルド芸術研究会」に参加した。その作品は鮮烈なメッセージ性を持ち、社会を痛撃する。そして美しい。

また返却に訪問せねばならない。それも嬉しい。優れて知性的な先生はまた優れて優しさの溢れる方である。でなければ私のような来訪者を相手にしてくれる訳がない。


深く礼を述べ、退室した。

 

池田龍雄先生

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E9%BE%8D%E9%9B%84