・
雨にぬれし朝
輝きぬ
花水木の紅葉の先より水玉の雫落ち
池に波紋が広がるやうに
鈍色の今朝も静かに
始まりぬ
何事も過ぎ去り
何事も迎え来たる
新しき
鈍色の朝
雨の匂い立つ朝
土の上に
枯れ葉の上に
優しき記憶の上に
喪われし記憶の上に
生まれなん記憶の上に
銀糸の雨は降り注ぐ
満ち足りた猫たちもおのが寝床で寝息をたてぬ
やすらけき朝
すべてに優りし朝
秋雨の静かな朝のひとときの安らけき夢水に沈みたり