pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

北温泉の思い出



この温泉宿は近年旅雑誌やマスコミに露出すること多くなって秘湯好きには有名かもしれない。
昔、漫画家のつげ義春が絵に残したところだ。

山の上の駐車場から細道を下って20分ほど、那須の峡谷にポツンとある。
明治の3階建ての古色蒼然、堂々たる湯治場である。

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ここは我が家には毎年2回、夏冬訪れる温泉だった。
子どもたちはこの明治的「神秘的」空間に夢中になり、巨大な温泉プールは飛び込み可能、すっぽんぽんで遊んだ。大きなタイヤチューブの浮き輪や、後年には滑り台も設置された。昼夜温泉漬けの2~3泊。内湯は混浴2男1女2ヵ所ですべて滔々と源泉が降り注ぐ。


混浴は私たちが通っていた頃は不届きものはいなかったが、近頃はワニが漬かっているらしい。嫌な世になったものだ。

 

尤も、ある夏の朝、起きようという時間、せんべい布団の下の部屋から、あ~ん、はあはあと女の喘ぎ声が布団を通して聞こえてくる。

 

おいおい朝っぱらから元気な連中だなと思ったが、起床後顔を洗いに階下に降りていくと階下の部屋の入口が開け放たれ、他の湯治客が5,6人押しかけて覗いている。
なんとエロ映画の撮影をしていたのだった。
「どうぞ、ご覧になって結構ですよ」と撮影クルーの一人が私に声をかけた。
客の肩越しに部屋を覗くと若い男女が裸体を晒してむつみ合っていた。

 

ふ~む。
見られて平気なのだ。当たり前か。

 

昔若いころ、同僚や先輩に連れられ、ある温泉街のストリップ小屋に行ったことがあった。
驚いた。
美しい男女が目の前の舞台の上で立位で本番をしていた。
余りに美しい男女だったので覚えている。見て性的な興奮などなかった。

 

しかしその湯治宿でのそれは、比して余りに軽い。
この宿の主の息子がエロ映画の監督になって、自分の親の経営している宿を使っているとはね。それも呆れた。しかし、見られることが快感であるというカップルも世に存在するというから、好事魔多しどころか好事魔大好き。

 

これも夏のこと。
夜、廊下を隔てた部屋で宴会をしているグループがいた。
深夜内湯から絶叫のような大声を出す連中がいた。若い声で発声練習をしている。
こちらは眠いのに眠れない。
怒りが爆発して宴会場の襖を開け怒鳴り込んだ。
部屋の方には20人ほど若いのが酔っぱらって騒いでいたが、怒鳴り声で静かになった。


「こら!馬鹿ども!お前らだけ静かになっても、風呂場ではしゃいでいる奴らを黙らせろ!ここをどこだと思ってんだ!」
1人がすっ飛んでいった。
男子学生の合宿らしかった。
まったくもってバカどもであった。

 

翌朝3階の部屋から下を見ていたら件の学生らがぞろぞろ帰っていく姿が見えた。その中に中年の男もいた。おそらく指導教官だろう。この教官も昨日のバカ騒ぎを知っていたはずだが、怒鳴り込んだ時も、その後も出てこなかった。哀れというかバカというか・・・

そんなこともあって、また子どもらが大きくなって北温泉投宿はなくなった。

 

しかし、この宿の風情は建物も夏の新緑も冬の雪見も素晴らしい。(食事は自炊がいい。当時は余りに不味かった)

また・・・行きたい・・・

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