pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

夢の絵3

{子殺しのさきはふ国のまなこらは闇に隠れぬ冬ごもりおり}

 


夢を見たかい
この世には裏も表もあるそうだが本当かい
在るのは実は夢だけだ
真実の夢さ


壁の中に消えたわがともがらよ
浴槽の中で手首を切り
あるいは炎熱の東北の古道の草叢に斃れ
死屍は野積の吹き曝し

そのとき君らの瞳に映ったのは大鴉だったかい
いや、風呂場の窓から溢れる青空
いや、すすきの穂波の揺れ動く風
いや、壁の向こうの夢


二度とない青空や風を見たのさ
残忍や憎悪からようやく逃れて
わがともがらは
そして大鴉になったのさ

いや、かっこうになったのだ
「かっこう」になった
淋しく悲しいかっこうになった
光晴はノートに書き込んだ


「霧の大海のあっち、こっちで、
 よびかはす心と心のやうに、
 かっこうがないてゐる」


今も
子殺しに無関心な人々の間で
その無関心と敵意とモラルに苦しめられた挙句
手首を切り炎熱の野に斃れた

そのようにわがともがらは
霧の立ち込める林の奥で呼び交わすのだ
子殺しに無関心な善男善女のムラから逃れて
死して生きるのだ

 

やさしきわがともがらよ
深い森や林の奥に逃れて
ひっそりと呼び交わす声が聞こえる
ああ
無辺の林の奥から
我が父や母の呼び交わす声も
祖父母や叔父叔母たちの声もこだまする

一声発するだけでも
それは求めるのだ
さみしく呼び交わす声
さみしさを埋める愛を呼ぶ声が聞こえる

 

淋しいほど愛はみがかれ
悲しむほど愛は香りたかく
夢は深くなるのさ

喪失のあとの鉄輪の轟々たる夢の撹乱
喪失の無残のあとの汽笛の音の爆発する闇
喪失の空虚のあとの蜜柑の香り

あなたよ
私は一人一人名を呼ぶ
面影を残し林の奥に消えたあなたよ
夢のあなたよ

大銀杏の金色の降り敷く中に
炎熱の芒野原に
一輪の白百合の花に
夢はしずかに降り立つ


夢に在りて碧山に登り
更に夢を見んと頂きにたち
夢を忘れ夢に見入りてのち
在るはただ空漠の夢
山上天に接するに消え
明暗交わりて消ゆ可し

 

追記
これら3編の詩もどきは私が創作中の物語のテーマやトーンを補強する目的で書かれたものです。遠慮なくスルーしてください。

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