2019-03-11 7才の記憶と廃墟について 7才の記憶と廃墟について 今はただ崩れ墜ちよと東海の 冥き瞑目の黄昏の底 それが大袈裟なものでなく ヒトが去ってしまった家 主を失った犬小屋 用を終えた巣 蜘蛛の巣も ただの巣なら 美しい廃墟だ 熱い風 真夏の炎天に焼かれて燃え上がる廃墟 モノトーンの強烈なコントラストが燃え上がり 真っ青な空に浮かぶ廃墟 笑いすぎて思わず涙が落ちる そんな哀しい風景の中に いま 廃墟は音もなく佇む あまりの静けさに空き缶を蹴飛ばし 冥いみずたまりに空の深さを畏怖した 懐かしい記憶 そんな記憶さえ炎天に燃え上がり 消滅する廃墟を写し取った 鏡像さえ 熱い風に揺られながら 繁茂する卉草に沈み 咽返る卉草の海に いま 廃墟となる 我が7歳の満ち足りた感傷と 日焼けする肌の幼い興奮と 欠け堕ちてゆく 忘れ果ててゆく 廃墟の記憶 いまふたたびの 夏を待ち 帰らざる風景のなかに 夏を待ちわれら哀しみの影を踏む 以前のものをわずかに改稿しました。瞑目とは死です。 明日より帰省。一足早くお彼岸に備えます。もちろん一人で。私が動けるうちは。 写真 故郷