pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

復活 あちきはニャンコでありんす

・戯言創作改稿  

登場人物 巴琴 お花婆さん 恋川春町 アベ 小池婆
登場猫 傷だらけのジョニ― 紋太郎 ハチ ナナ ミ―
      

 

 

    あちきはニャンコでありんす

         春

だ、だれだ!気色悪い物言いする奴は!
俺は寝ぼけまなこをひん剥いて辺りを見渡した。

 日差しは中天からぬくぬくと降り注ぎ、五月の柔らかい艸ぐさの甘い香りに包まれて、甘美なる夢に微睡んでいた俺は耳元で、「ありんす」とか昔に聴いたふうの女言葉の甘ったるい声を聴いたのだった。あの当時は、気取った女がそんな言葉で麝香を漂わせさそいを掛けて来やがったが、大概そんな手合いの女は用が済むと、尻尾を天に真っ直ぐ上げ、尻をフリフリ気取ったウォークで闇に消えていったものだ。

 あれから二百年ちかく過ぎたが、今時そんな言葉を聴くとは思いもよらず、一瞬慌てたわい。

 幻聴か……俺も歳だからなぁ。
だいたいだな、何が「ニャンコ」だ。バカ女めが。
我らのご先祖は百獣の王、ライオン様や虎様を持つ由緒正しい血統である。まぁどこかで我らは小さな猫族になっちまったが、心は錦、じゃない!つい人間の間抜けな口ぶりが移ってしまった、心は百獣の王!てなもんだぜ。

「ニャンコ」……情けねえ!
聞いて呆れる紋次郎ってなもんだぜ。今時で言やあ、ギャル?と巴琴とか言う老いぼれが言ってたな。口の減らねぇじじいだが、上手い事言う。つまり響きだな、ギャル、おもしれえアハハ。

 アハハ、ギャル猫め、今どきのギャル猫めらはプライドってもんがねえ。頭も悪い、行儀も悪い。ありゃあ、人間の影響だな。下手に人間の家で猫っかわいがりされちまってよ。
テレビとかいうものを否応なく一緒に見されられたり、テレビじゃ人間の女の子がゾロゾロ空っぽ頭丸出しでな、なんだ?フー族?そんな種族があったかどうか知らねえが巴琴が言ってたな、そのフー族嬢顔負けの格好で飛んだり跳ねたり、下手くそな歌を喚き立てたり、そんなもんを年がら年中見せられちゃあな。ギャルも感染るってえもんだぜ。

 まあ、悪態をついたところで、「ありんす」姐様はもう居ねえや。思えば、姐様はいい女だったな。すっきり啖呵も切りながら、小股がこう切り上がってよ、なよとした腰つきで、流し目なんぞ……小唄なんぞ聴いたらもう・・・
いけねえ、思いでに耽るのは俺も歳だからなぁ。
ありんす姐さんで目が覚めちまった。
まあ昼寝もし過ぎちゃいけねえ、と思ったらなんでぃおやつの時間じゃねえか。

 いけねえ、嫌なのが歩いてらあ。
同じ町内に住んでる小学生のスネ公だ。こいつは乱暴者だ、気を付けにゃならん。
なに?猫の分際でおやつなんか喰うな?
しかも年寄りがだと?

おやつってえのはな、八つ時に喰うからおやつなんだよ。
知らねえだろ、ガキめ。

スネオはおやつ貰ったか?
おいおい、棒を振り回すな!あぶねえ!

そういうのを八つ当たりってんだよ。

しようがねえガキだ。

さあて、ちょっくら巴琴の家でおやつを貰いに行くか。
あいつは大甘だからな。
へへへ、今日はマグロ味かな〜〜

お、ハチ公が門から出てきやがった。
おい、ハチ公!

こら、ハチ、なんだよじゃねえんだよ、口の利き方気を付けやがれ。ったく、今どきのガギは躾がなってねえ。親の面が見てえもんだ。あ、巴琴じゃった。
アハハ、あのジジイならしようがねえ。

おい、ハチ、おやつはなんでえ。
なに?ああ鰹味かい。
まあいいや、初鰹!ってなもんだぜ。いい頃合いに出しやがる。さすが巴琴だ。皐月の青葉に初鰹!いよッ!いただき!
まあなんだな、たらふくおやつを喰ってまた眠くなってきやがった・・・

糖質とりすぎ?
摂ると眠くなる?

やべえ!
俺様としたことが、すっかり忘れて糖質を取り過ぎたぜ。
あはは。笑ってごまかす可愛い僕ちゃん。血糖値が上がって困ったもんだぜ。

なに?
猫の分際で糖尿病だと抜かすんじゃねえ?
実はなあ、俺様も人付き合い良すぎてなあ・・・いやはや、恥ずかしい・・・穴があったら入りてえ。
つい!
ついつい!
据え膳食わぬは男の恥!
?意味が違う?

いや、だいたいがだな、人間のせいだぜ。
俺様の糖尿病はよ。
なんで?
決まってんじゃねえか。
なあハチ公、お、モン太郎も居たか。だよな?

へい、仰るとおりでして。

そうだろう。
俺の言うことに嘘はねえ。ドライフードとかぬかしやがって、糖質たっぷり添加物たっぷりじゃあねえか。花粉症もあぶねえな、こりゃ。

俺たちゃ、以前はネズミだのニワトリ、魚屋、あ、こりゃ、秘密だが、野原や里にいくらでも食いもんはあったぜ。蛙の串焼きなんざうめえのなんの。浜じゃ魚がどっさりよ。あ、これは漁師の旦那が呉れたもんだが。それがまあ今時ときたら、草原もない!山裾までコンクリートとかいうやつで固めやがって、ようやく溝を見つけてもやっぱりコンクリートだぜ。町じゃ川やドブがフタをされてな、鼠一匹いやしねえ。都会という場じゃあ今度はネズ公がやたら巨大化しやがって、下手すりゃこっちがあぶねえ。まったく色気のねえ町になっちまいやがった。

まあそんなこんなでお互い様よ。
しゃあない、カツオ味喰ってやるか。
炭水化物タップリの安物なあ、こら、巴琴!
もうちょいまともなおやつを出しやがれ!

旦那!ジョニー様!

何だい、ハチ公。

 くいもんの話で思い出しやしたが、あれ、テレビちゅうやつ、あれを見てましたらね。人間は喰うことが命みたいな連中でさあ。四六時中、食いもんの話ばっかでね、なんでぃこりゃ!呆れ放しですわ。飢えてんですかね?その割にダイエットとかの話も多い。ナンノコッチャ?そう見えましたぜ。たらふく喰って、痩せるのにまた頑張っちゃって。人間ちゅう生き物は矛盾が大きいでやんす。でもって喰いもんがどっさり捨てられちゃって。まああっしらには好都合でやんすがね。 
ところがすっとこどっこいドッコイさでね。この国以外の所じゃあ、なんと本当に飢えて死んでる人間たちも大勢。知ってて知らぬ顔だ。まことに奇妙な生き物です。分けてやるって知らねえんですかね。

そうかい。変な話だな。巴琴じじいなんざ枯れ枝みたいに痩せこけてやがるぜ。俺は下町のツイッギーとか訳の分からん事言ってな。だいたい、奴の家には食いもんが少ないからネズ公もいねえや。そんなじいさんがくれる餌だ、文句は言えねえな。
おい、ハチ公、そういやあ、てめえは巴琴ジジイのところに来てもう四年だな。月日のたつのは早ぇなあ。

まったくで、ジョニー様。もう四歳でやんす。いやはや・・・

おめえ、フクシマの浪江ちゅう村からきたんだっけな 。いや、保護とかで連れて来られたそうじゃねえか。世の中ににゃ親切な人間もいるんだな。一方じゃホケンジョとかいうところで仲間が大勢始末されてるってえのによ。殺されるなんて、そんな悪いことしてるわけねえのによ。これもおめえのいう人間の矛盾ってやつだよな。

へい、仰る通りで。

で、どうだったんだ?
向こうでの食いもんは。

いやあ、あ、ここにいる新参の紋太郎も同じ南江でやんすが、そうでやんすねえ、いくらでも食いもんはありましたぜ。ネズ公、モグラ、バッタ、鳥・・・川魚も結構獲れたっけ。そう、人間が居なくなってニワトリとか。美味かったニャー、
ただね、旦那、牛や馬が哀れざんしたねえ・・・
繋がれたまんま・・・骨と皮になって斃れてやがる・・・
ありゃあ、見られたもんじゃねえ。

そうだな、それは酷え話だぜ。家族同様って言ってたんだろ。それがなあ、いくら危急とは言えよ。まあ仕方がねえ。あのゲンパツとかいうのが爆発して慌てて逃げたわけだ。しかし、なんでそんな危ねえシロモノをわざわざこさえたんだろうな。聞いた話じゃよ、放射能とかいう目に見えねえもんで生物がやられるっていうじゃねえか。しかも、そいつぁ一〇万年たっても消えねえというじゃねえか。わざわざ・・・人間ってのは自分の首を締めるためにやるんかいのう。これも矛盾ってやつかい。

いや、あっしに言わせてもらえばですね。

お、モン太郎何だい?
言ってみな。
お、ほれ、虫捕まえたぜ、
虫食いねえ。

いや、旦那、虫はですねえ、腹の虫が・・・

おめえ、腹ン中に虫飼ってんのか?

まさか、ご冗談が上手い!さすが旦那!いよ!傷だらけのジョニー様!

まあな、俺様、ジョニー・デブと呼ばれてんだ、アハハ。
じゃない!おいモンたろう、何が言いてえんだい。
聞かせてくんな。おりゃあ、暇でな。

はい!
人間はですね、この二年わたくしめが研究いたしました所では、一つ結論がでたのでございます。

ほう!
その結論とやら聞かせてもらおうじゃねえかい。

はい、
ゲンパツなんぞ作って結果自分の首を締めてると旦那おっしゃいましたね?

おう、言った言った!

つまり、そんなものを作って喜んでる奴らは・・・

ん?やつらは?

自虐!

なるほど合点、自虐がそいつらの質かい。

そうでございます。
間違いございません。
自分で自分を虐めるのが奴らのさが!ダイエットなんてえのも同じでしょ。つまりマゾ。
しかもそいつらの片割れがですね、テレビで自虐史観とか訳のわからん話をしてましたからね。

おめえ、小難しい話よく知ってるな。

はい、こう見えてもわたしめは、この界隈では木枯らしモンたろうと呼ばれております。ニャンワセダセーケー卒でありんす。

なにぬかしてんだか。変な野郎だ。ガクレキを出す奴ってのは信用できねえと巴琴が言ってたな。
こちとら、おやつを頂戴して心持ちも安穏だ。
風が爽っと顔を撫でるとかすかな蓮華草の香りが鼻をくすぐりやがる。良い塩梅だせ。

お、それでよ。木枯らしの紋太郎よ。
話よ、その、なんだ?自虐歯科ってえのは?

ちょっと、デブさん、じゃないジョニーさん、それじゃ神田三丁目のヤブ医者じゃないですか。

ああ、ありゃ酷えらしいぜ。巴琴ジジイがこの前行ったらよ、上下の入れ歯を逆に入れられちまってよ、痛え!と叫んだらよ、ヤブがよ、逆もまた真なり!とかぬかしおったらしい。

あの、ジョニーさん、逆もまた真なりって、すげえ医者だな全く。まあ、当たらずと雖も遠からず。
自虐史観てえのはですね、いやあ俺は悪いことやっちまってよ、取り返しのつかねえ悪いことだ、すまねえ、許してくれろ!と、詫び続ける歴史観って事でさあ。

ん?
待てよ、紋太郎、そりゃ当たり前だろ?取り返しのつかねえ悪いことやっちまってよ、相手に許してもらうまで詫び続けるってえのは?。

ところがでさ、そいつらの言う事には、いや、そんな悪いことはした覚えがねえ、何かの間違いだ。証拠もねえ、そんな理屈でさぁ。

間違いならしょうがねえじゃねえか?
証拠もねえならよ。

いや、ところがでさ、証言は彼方此方たんと出てるんでさ、証拠はと言うと、いや、笑っちまうんですがね、自分らで目につくやつは片端から燃やしちまったってぇ事らしい。

なんじゃそりゃ?
バカじゃないの?

いやぁ、ところがでさ、そんな話を振りまいた連中がお偉いさんのお気に入り。

じゃぁ、そのお偉いさんもバカか?
へい、道理としては逆立ちしてもバカでさ。

お!
おいらにも分かったぜ!
あの自虐歯科だ、上下逆もまた真なり。
バカは逆立ちしてもバカ、ってぇ事だ。そいつらは。
まぁ巴琴ジジイはよ、上下逆に入れ歯を嵌めても大した違いはねぇ、どうせお迎えが近い。

ところがジョニーさん、道理ならそうですが、無理を通せば道理引っ込む。

ややこしいねぇお前の話は。

つまりでやんす。
『バカが戦車でやってくる』

?、
山田洋次監督とハナ肇だろ?そいつは俺、むかし映画館で観たぜ!サブってぇ野郎が村のごろつき議員共相手に暴れ回る話だが、弟の平六ってぇ知恵遅れのガキがその最中におっ死んじまう、ってぇ話だ。泣けたねぇ。

いや、それがサブみてぇな野郎なら拍手喝采でやんすがね。どうも、そんな自虐歯科、じゃない!自虐史観を嬉しがる国のお偉いさんじゃねえ……村も国もおんなじなんすかねえこの国は。

まさか!首相が戦車でやってくる?

ホラ!来た!法螺かホラーだ!


木枯らし紋太郎がそう呟いた時に、冷たい風がひゅ〜〜と三匹の猫の間を吹き抜けていった。

おや?
季節外れの木枯らしみてえな冷てえ風だぜ。

そんなジョニーの言葉を聞かぬフリをしながら紋太郎は冷や汗を流すのだった。

お、俺のせいだ・・・ウケるはずが全然受けてねえ・・・
ギャラリーも閑散・・・みなどこにいった・・・
花はどこに行ったという名曲があるが・・・
いけねえ、また、しくじりそうだ、黙っとこう・・・

そうだ!

その時素っ頓狂な声を上げたのは先刻らい沈黙していたハチだった。

そうだ!

何がだい?ハチ公、驚かすなよ。せっかくしみじみと『あべこべが戦車でやってくる』を映画化したらどうなるか構想を練ってたのによ。

いや、デブさん、じゃねえ、ジョニーさん。そのあべこべとやら・・・そう長くは持たねえんじゃねえかそんな観測が流れてますぜ。

ん?
ああべこべが長くは持たねえ?なんでだい、それじゃ俺の映画の構想がまとまらねえ。

いや、あべこべ・・・じゃなくてアベ!

つまりでやんす。
ここをしっかり聞いておくんなまし。

アベがアヘアヘ言い出した・・・そう聞いたんでさあ。

なに?
あべがアヘアヘ

そう、あべがアヘアヘ言い出したら・・・

言い出したら?

アヘアヘ病でやんす!

なんだ?聞いたことねえ病気だな。

そうでやんす、あべがこの国に持ち込んだ病です。アヘアヘという声が聞こえて来ますから注意してくんなまし。それをうっかり聴いてしまうと、アヘアヘ病、別名、腹黒死病という不治の病に罹患します。
罹患したらこれはもう一巻の終わり、人生の終わり、人生の全てが無駄無価値になるちゅう恐ろしげな病でんねん。

そりゃ怖えなあ!
アヘアヘ病か!
あべが!

濁!

なに?濁?諾の間違いだろ。読んでる人が間違えて入社試験に落ちたらお前のせいだぜ、ハチ公!

いや、濁です。
あべの濁点抜くと・・・あへ。


聞いていた紋太郎は内心喜んだ。
この寒さは半端じゃねえ。
ハチ公、でかしたぜ!


         秋


秋も深まったな、腹が減る。
天高く猫肥ゆる秋早く来い 
           by.傷だらけのジョニー
巴琴ジジイの俳句好きが移ったぜ。
まぁそんな時代は来ねえよな。巴琴じじいもケチだしな。なんだい、今朝は煮干しだぜ。全く。せめて秋刀魚の塩焼きくらい出せってんだ。
おい、モン太郎!

はい、ジョニーデブさん!
デブは余計だ。一度くれえデブになりてえや。あ、違う、モン太郎よ、最近また巴琴じじいのブツブツが始まったな。何やら深刻な顔しやがってよ。こちとら飯がまずくならあ。

はあ、それはオイラもハチ公も感じてまさ。
何でも巴琴爺さんはまた就職決まったそうで。

なに?
あの老いぼれめ、性懲りもなくまた勤める気か。歳甲斐もなく。大人しく隠居してろってんだ。しかし、そりゃ、本人の希望だろ。何でブツブツブツと…おダブツが近えか。

あ、ジョニーさん、座布団一枚!

なんだよハチ公、こんな駄洒落、へっ!
なに?冗談に聞けえねえ?
そうだよな、実際お迎えの近いジジイだ。

いや、それがです。 
昨夜もですね、あの駄作作家の恋川春町とお花婆さんが巴琴爺さんの長屋で怪気炎!

あれ?
ブツブツおダブツじゃねえのか?
なんか変だな、モン太郎。

僕が聞いた話ではですね。
内定が決まったという口実で飲めや歌えの長屋の宴会!つまり、彼らは口実さえあれば怪奇炎!まぁ、何でも口実にしちゃう人たちですがね。この前なんざ、ご近所の厚化粧の小池婆さんが足踏み外して肥溜めドッボ〜ン!アハハ、あのゴウツクババアめ、ザマアねえ。天罰出せ。よっしゃ!宴会!こんな感じでさ。

何じゃそれ、おい、何が僕だ。育ちをひけらかすんじゃねえよ。しかし、あの小池婆が肥溜め!アハハ!日頃強欲だけ、厚化粧の上にウンが張り付いたか?いやウンで厚化粧が剥げ落ちたか?アハハ!

全くでやんす。小池婆の双子の弟のシンゾーがそれを聞いて高笑い!

なに、ハチ公、姉の不幸を喜ぶシンゾーか?
相変わらず人非人だぜ。

そうなんですよ、ジョニーさん。シンゾー組の連中、下っ端に行くほど哀れ。底辺の連中は生保に頼るしかない。散々こき使われて末路は悪徳病院で尻の毛まで抜かれてオダブツ…それでも何も気づかずシンゾー親分!なんて、悲惨。親分らはブタのように飽食欲ボケ嘘八百、あ豚さん失礼、自分らは食い物にされてんのにねえ。

聞きやしたか、ジョニーさん。お花婆さんの知り合いがですね、身寄りのない一人暮らしから病院に送られてしまった。どうなったと思います?
SFでさあ。

なんだい、ハチ公、ハッキリ言いやがれ!

いやぁ驚き桃の木山椒魚!そのお花婆さんの知り合いの婆さん、エイリアンみてえなチューブだらけ、オマケに手足縛られて…病院の鴨、いや、気づいたらいやもう出られない!山椒魚

堪んねえな、ハチ公よモン太郎よ、シンゾー組は。大日本帝国組とか威張ってたな。貧乏人の小倅どもを兵隊に仕立てな。そんなのを信奉する頭ってなんだ。小池組も同類ッテか。同類の不幸を喜ぶなんざ、やはり外道だぜ。

全くですよジョニーさん。だから巴琴爺さんらも「ついでにシンゾー組も肥溜めにぶち込んじゃえ!」と気勢だけはお見事!あの人たち、歳をすっかり忘れてます。

そうか、モン太郎、しかし、まぁ元気なのは分かったが、なんだよ、あの巴琴ジジイのブツブツは?
あ、そうそう、爺さんの言うことはですね。
 俺ゃ採用されたは良いが、ふざけんなよ!考えるほど腹が立つ!なんで前期高齢者を過ぎても働かにゃならん!あのシンゾー組の策略にハマっちまったぜ!アイツらゆくゆくは年金も75歳支給とか、徐々に支給額を減らしながらよ。オマケに介護保険料ボッタクリの挙げ句に家でくたばれだと?外道どもめ。
 まぁ、こんな感じでブツブツと…

なあるほど、分かった!モン太郎!う〜む、ここで一句。
  天高く肥溜めに居る外道ども!
どうだ?


しかしなあ・・・ハチ公、いくらアベがアヘアヘ病でもなあ、一国の首相だろ?
国民の代表だろうがよ。
アヘアヘ病は、腹黒死病かい。
おっそろしいな。それに罹りゃ本人も一発アウトじゃねえのかい。

それなんざんすよ、ジョニ−さん。
本人は腹の中真っ黒けっけ、ドブより臭い屁をこきまくってまあ酷え修羅場でやんす。
本人は腹黒死病の生みの親、死なねえんでがす。
まあ国会ちゅうところというか、それがふんぞり返ってる永田町という街自体がですね、これがまあ・・・

何だい、ハチ公。

へえ、いや、屁えと書くべき恐るべき屁たれ悪臭の街。いやはやもう、あそこにゃ我ら猫族はみんな逃げ出して住めるもんじゃねえ。あの街には我ら猫族は一匹もいねえ。なんですかねえ、人間という動物は嗅覚が麻痺してんですかねえ・・・


ちげえねえ!

ハチ公、ジョニーさん、あっしが研究したところはですね、人間という動物は嗅覚も視覚も聴覚もいかれてまさあ。

なに!嗅覚も視覚も聴覚もいかれているだと!おお事だぜそいつあ!
もうちょいそこんところきかせてくんな。

へい、
視覚の方はですね。
ドッからどう観ても悪党面若しくはバカ面おっさんヅラをですね、平気で代表にするんでさあ。
あっしら猫族は相手の顔にその器、器量というもんを観ますね。

おうおう、その通り!
顔には全てが現れるってえもんだぜ。
しかしだな、あの巴琴ジジイが言ってたのを思い出したんだがよ、人間だって、四十になったら顔に責任を持てとか。つまり、顔というか人相というか、見る目はあったんだろう。
あはは、それを言ってた巴琴ジジイの顔ったらまあ真面目くさって、ありゃあ唐変木の石部金吉だぜ。隣のババアに話してんのを聞いてるとおかしっくて笑っちまう。

巴琴さん、ちょい耳貸してなあ

なんだい、お花さん、耳を貸してやるのはいいが、ちゃんと返せよ

こんなやり取り毎日聞かされてりゃあ、天下泰平ってなもんだと思ってたが・・・


いや、まあジョニーさん、そりゃあ、ま、いいや。

次にですね、聴覚。
いやあ、アヘがじゃねえアベが話しているのを聞いてるとですね、奴にゃあ相手の言うことがまるっきし聞こえてねえ。国会でなにかブツブツ独り言ですぜ。

なに?
独り言?
そいつあいけねえぜ。
皆の前でもブツブツ始まったらそれこそオダブツってなもんだ。
お迎えが近いんだなあ。
しかしなんだな、嗅覚も視覚も聴覚もいかれちまってよ、オマケに逆立ちしてもバカはバカなんだろ?

へえ、
なんせ『バカが戦車でやってくる』の主人公ですからね。
あの国会の論戦なるものを聞いてりゃ、こっちがおかしくなっちまう。

言ってることが支離滅裂ってか?

そうなんでさあ、それでね、ジョニーさん、アベはどうもアヘアヘ病だけじゃねえな、うん。痛いだろうなぁ!!!

なんだい、その奥歯にものが挟まった言い方、ハッキリ言いねえ!

へい!
つまり

つまりなんだ?

詰まってんでつまり、痛そう!!!

なにわけわかんねえこと抜かしてやがる!

いや、その支離滅裂

ん?


尻滅裂・・・・

アハハ、痛そう!!そりゃあ悲惨だわな。
そういやあ、おい、聞いたぞ、巴琴ジジイがデモに行ったんだと?
ホントかハチ。

ヘイ、ジョニーさん。ホントです。


はああ…
杖をついてヨタヨタ歩いて2時間もかけて・・・
まるでつげ義春の『蒸発』に出てくる乞食井月そのままのじいさんがよ・・・

ジョニーさん、それは言い過ぎじゃねえですか。
乞食井月はそのままの乞食になったんでしょうが、巴琴じいさんは、俺は下流老人だ!ってこの前も威張ってましたぜ。

なんだい、その下流なんとやら?
おい、モン太郎!

ええ・・・下流老人とはですね、年金だけじゃあ暮らしていけねえ老人のことだと聞いておりやす。

なに?
年金ったあ、老後を安心して暮らせるようにと作った制度じゃねえのかい?

お!よくご存知で!

あたぼうよ、俺はダテに二百年生きてんじゃねえんだ。
しかし、すると巴琴ジジイめ、年金だけじゃ暮らしていけねえって寸法か?

ヘイ、あのジイさん、日に食事は1回!
武士は食わねど高楊枝!
なんてブツブツ言いながら一汁一菜の食事でさあ。
まぁ糖尿病には効果抜群。

しかし、そうだったのか、巴琴ジジイめ、だからバイトするのか、あの老いぼれで。なあ、ハチ公。

まぁ、バイトはいいんじゃねぇですかい。
家に閉じこもって一日中ブツクサ言われてりゃあっしらも気が滅入りやすしねえ。家からでないナナちゃんやミーちゃんらはたまったもんじゃねぇ。それに、ジョニーさん、巴琴じいさん、なんて言いやがったと思います?「アハハ、病院かあ、ムフフ、白衣の天使がワンサカじゃ、ひひひ」
笑い声を三種類!あっしら、このじいさん気が触れたのかと思いましたぜ。

こら!ハチ公!
あの老いぼれ世代はだな、白衣の天使には思い入れが強烈なんだよ。知らねえだろうがな。いや、そんな話じゃねえ。なんでヨタヨタ巴琴ジジイがデモなんぞに行ったのかってぇ話だ。年金だけの理由か?

いえ、あの『安部が戦車でやってくる』でさあ。安部の若僧が尻滅裂な頭でこの国を戦前に戻そうとしている!ワシのじい様は戦死!親父は傷痍軍人!戦前のキチガイ共に命令されてだ!おまけに曾祖父は上野で討ち死に!許せるわけねぇ!俺の孫共にも顏が立たねえ!なんて、まあ隣りのお花婆さん相手に息巻いてましたぜ。

ほう、で、お花婆さんはなんて答えたかい。

いや、それが……ウットリ顏にウルルン目線で、まあ、巴琴様、それでこそ男!なんて言いやがったもんだから、ああ、見てられねえ。巴琴じいさん思いっきり目尻を下げ口元はニンマリ、まるで正月の福笑いみてえな顏になっちまった。

ワハハ、ハチ公、巴琴ジジイの元気の元だな、で、デモから帰ってどんな様子だったい?

それが夜遅く帰ってきましてね、さぞボロ雑巾状態だろうと思ってましたらね、警備隊とデモ隊に長時間サンドイッチで呼吸困難になって苦しそうな女性を助けてやったぜ、なんて意気揚々と。なんでもその女性、竹久夢二が描いたような美人だと言ってましたぜ。じいさん、交差点の前例の方にいたらしくて、杖を振り上げたらお巡りがびっくり、逮捕!と言いかけたら、じいさん「コラア!」と大音声!声だけはでけえじいさん。

おうおう、それは知ってる。で?

「女性がここに苦しんでおる!助けんか!」と叫んだらしいですが、その最後の発声の時にですね、

なんだい、なんだい、早く言え!ハチ公!

へい、巴琴じいさんの入れ歯がヒュー!とお巡りめがけて飛んで行っちまった!
驚いたのはお巡りたち、わわわ〜と引き下がり、思わず道を開けたそうな。

な、なんだ、空飛ぶ入れ歯か!


へい、あの上下逆さま入れ歯、無理が通れば道が開く。スミマセン、苦しいオチで。


おい、モン太郎!
なんだ、あんぽんたん法案が成立したってよ。


はあ?
ああ、安保法案ね。
予定通りってことですぜ。

なに?じゃあ、巴琴ジジイがヨタヨタ出かけたのも無駄足だって分かってのことかい?

そりゃ鼻っから承知でしょう。

ほう、負け戦に加担したってえわけだ。随分な侠気じゃねえかい。え?ハチ、そうは思はねえかい?

へえ、そうですがね、だから、今朝から大変でさあ。

なにが大変だ?
入れ歯でもなくしたのか?空飛ぶ入れ歯だからなあ。

いや、隣のお花婆さんと怪気炎!

お花さん、これからが勝負なんだぜ!たかがゴロツキどもの可決!あんなにわか詐欺師みてえな可決なんざ、屁一発で吹っ飛ぶわい。こちとら、菊に盃紅葉に鹿よ!

へ、巴琴様、今日は秋晴れ菊日和、長雨も上がってよござんした。じゃあ、取って置きの「李白」一本ぶら下げて菊でも眺めに行きましょうかい。

むふふ〜、お花さん、「李白」かい、そりゃごうきだねえ!
こう見えても俺は下流老人巴琴、天神様に詩吟でも唸ってやるか!

こんな調子で、二人でヨタヨタ亀戸天神に行っちゃいましたぜ。
まるで堪えちゃいませんぜ。

なんだと、菊見に行った?
しかしなあ、これからが勝負って、先のねえジジババ共が、しかも、なんだ、俺は下流老人巴琴って?下流の意味がわかってねえのかい。え、ハチ公。

いや、わからねえはずねえんですが、この前そんな話がでましたね。恋川春町ってえ年寄りが


「おい、巴琴よ、俺たちゃ下流老人なんて言われてんだぞ。しってるか?」

「アハハ、下流か、上等だぜ。俺たち下流のすぐ前には前途洋洋!太平洋が広がってんだぜ!春町よ、チョロチョロ上流とは比べモンになんねえよアハハ」

万事こんな調子でさあ。アハハ!

そうか。
馬鹿と巴琴にはつける薬はねえってかい、アハハ。

じゃあ、ハチ公、モン太郎、俺たちも隅田川の土手に昼寝でもしに行くか!なんだい?ハチ、ぶら下げてんのは?

あ、これ、お花婆さんから頂きやしたおやつです。
あんぽ柿!

安保柿?

いえいえ、安保柿は亡者の食いもん。

 

以上旧稿。