【雑詠】
うぐいすの初音も気鬱温暖化
季語多く、「温暖化」を別の表現にしましょうという事で、次回の宿題。但し、初音と気鬱を結びつける新鮮さに高評価。気候変動も話題となった。やはり皆さん敏感です。
久々の図書館の香や冬ごもり
図書館好きの女性の句。古びた本の香りと地元の木材をふんだんに使用した図書館の香り。「冬ごもり」の結句が全体を引き締め安定させている。
夢なれば膨らむばかり去年今年
もう歳だ、現実的な夢は無い。去年、今年、一年が過ぎる重さ。だから夢は一層ふくらむ。難しい句。
ひよ鳥のこえ高く鳴くさむい朝
冬の荒涼とした深い世界観を感じる。ひよ鳥と中句の取り合わせに平易な結句。
遊水池命抱きて眠る冬
詠まれた遊水池は団地の端にある大きなすり鉢状のもので上部は柵で囲われ立ち入る事はできない。作者はそこでたくさんのトンボの舞う姿を目撃し、その感動を込めた。人が入らない為にその、大きな池には多様な命が育まれている。白鷺も舞う。
読初めの父の手書きの一代記
作者は新年の読書に、読み親しんだ父親の手書きの一代記を選んでいる。幼い頃から苦労辛酸を嘗めた父親を偲ぶ。その手書きを息子たちが製本したという。父親の記憶の確かさも感動。私ならとても自分の日記は残せないわ、そんな意見やら戦後の苦労の話が花開く。
娘来て台所する三が日
滅多に来ない娘が三が日、家で手伝う句。平凡な生活句にほのぼのの雰囲気。
【遠景近景の句】
街路樹の梢怪竜冬の空
作者の個性そのものの句。題が難しく追い詰められてやっと出来たと幾分抗議の視線。しかし、冬の梢の姿を怪竜と見た作者の心持ちの純に評価。楽しい句。
山眠る万葉の碑は陽を受けて
巾着田に立つ万葉の碑があるとは気づかなかった。何度も歩いていたのに。写真を見せて頂いたら、直截な恋歌である。読んであげたら作者は赤くなって焦りまくった。ついでに若い頃のエピソードをちらり。
遠い鐘消えゆくままに餅を焼く
除夜の鐘は、当地でも聞こえてくるので普通の情景かと思っていたら、東京では聞こえないとか。うるさい!という苦情で消えてしまったらしい。本当なら東京は何とくだらぬ都市かと思う。江戸博物館など天下りのお飾りに過ぎぬではないか。しかしこの句、俳句の真髄。遠近に時間の流れと匂いを淡々と描写。
冬虹や遠く連山うっすらと
作者だけでなく、もうひとりそんな虹をご覧になったという。冬虹はまだ私は見たことが無い。やはり気候変動かもという話題となった。寒雷の話題も。それにしても美しい句。
初日の出ゆらりと見ゆる御幣かな
見ゆる、は御幣にかかるが、初日の出の述語にも見える。初日の出というそれだけで句を成す言葉に中と下の句が結んで対照的な情景。初日の出の赫たる色と御幣の真白。
以上。今回は元教授さんが発熱欠席。5人参加とやや寂しい人数だが、皆さんの佳句の明るさ力強さ美しさと、穏やかな談笑で満ち足りた時間となった。気候変動が季語の世界を変えてしまうという危機感もでたり、親世代の大変さ、皆さんの勉強熱心な姿。良い句会です。差し入れの手作りケーキと珈琲で談笑タイム。その中で、私の4月からの勤務を告げて木曜が無理なので退会希望を述べましたが、じゃあ4月から日曜にやりましょうと、あっさり否決。ま、有り難い事です。