pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

出稼ぎ部屋探し


西荻窪駅の菓子店前で不動産業者と待ち合わせた。
目の前に業者はインフィニティを颯爽と操って来た。前席に座り業者を見ると金のストライプスーツに金時計、サングラス。やれやれ。

私の会社は格安物件中心に扱ってますという話であった。


沼袋駅近に23000円の部屋がありますという。車一台やっとの細い道をくねくね入っていくと脇道で工事中で誘導員が立ち入り禁止の立て看を指差し、その旨を業者に告げた途端、業者はその老いた誘導員に向かって怒鳴り始めた。

 

ウッセー!なんだ?バカヤロー!余計なお世話だ!

 

と、恫喝している。
やれやれ。ヤクザじゃない。チンピラ上がりだな。歳は50ちょっとと自分で言ってる。たまたま機嫌が悪いという訳ではない。相手を見ながら発作的に反応するのである。

物件前に着く。錆びた階段を上がり、向かい合わせの部屋に入ると、まぁ、これは…4畳半という触れ込みだが、トイレ台所含めてだった。押入れには引き戸もなく、カーテンをかけるという。人の住んでいた気配もない。一応小さな台所の台回りに新しいステンレス板が貼り付けてある。こりゃあ、直下型震度2でペシャンコだぜ。

トイレがあります!

ああ、昔の座り込み便器だ。タイル張り。

 

トイレがあってこの家賃はまず他にないですよ!

このおっさん、やたら23000円を繰り返す。

 

あんまり大声で23000円を繰り返すな!と言ってやった。

こういう物件は殆どないんです。皆新しく建て替えてますからね。

そりゃそうだ。希少価値では…ある。

 

帰りの車内で、契約を勧めて来たが、まだ他に下見を依頼している業者があるので断ったが、こんな物件はありませんよ、と諦めが悪い。残念無念。私、巴琴さんのような人、いい人だと思いますなんておべんちゃらかなんか分からん事を言う。

駅前で降ろしてもらったが、その時、路上からこちらにペコペコしているおっさんがいた。

 

一服してんです〜、と指に煙草を挟んでニコニコ。軽い知的だ。どうやらこの金ピカ業者は町のそんなカオなのだ。まぁ、仕事も真面目にやっている。

 

駅前に煙草可とある茶店を見つけた。。都内では次第に姿を消しつつある古い喫茶店だ。さっきの兄ちゃん宜しく私はここで一服。

 

そこから田無駅まで行き、バスで武蔵境の次の不動産屋に向かう。田無市…昔暮らした学寮がある所だ。ビルだらけでもちろん面影はない。

そうだった。大学入学前に部屋探しをして、案内してもらった部屋は掘割側の3畳だった。しかしその後入寮試験(面接)が通り、天国の寮生活となった。

 

次の業者は一転真面目そのもの。
始めの対応者は私の地元から通勤していた。80分くらいの通勤。やや疲れが見える中年。私の要望を聞いて、セカンドハウスですね!などと言う。アハハ!セカンドハウスか。なるほど。聞くと、そんな客も結構いるらしい。2万なにがしでセカンドハウス、面白い。アハハ!


なんでも会社に復帰した72歳の人が似たような話だったとか。

物件へは新入社員が案内してくれた。井の頭公園前。場所は良い。昔、吉祥寺や三鷹は子供らが学生生活を送った土地だ。時々遊びに来たものだ。

 

物件は、先刻の物件ほど酷くはない。震度3でペシャンコか。1階だから窓から跳び出し可能。10部屋はあるアパートだが、他の部屋は埋まっている。ところが、一つ、問題があった。ネットチラシではエアコン付だったのに、ない!まぁ2万5千の部屋。強く抗議はできないが、担当が翌日大家と交渉するとなった。どうも、大家は敷地内に住むおばあさんらしい。年寄りはエアコンに無頓着か。入居者が勝手にエアコン設置してるのよ、とのたまうたらしいが、不動産屋としては信用に関わる。
店に帰って、他の物件も紹介してもらい、帰宅。

雨は降らず助かった。 
今朝は薄っすらと初雪だった。