pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

映画「インデペンデントリビング」



f:id:pakin:20200221140335j:plain




映画「インデペンデントリビング」オフィシャルサイトより

「物語の舞台は大阪にある自立生活センター。ここは障害当事者が運営をし、日常的に手助けを必要とする人が、一人で暮らせるよう支援をしている。先天的なものだけでなく、病気や事故などにより様々な障害を抱えながら、家族の元や施設ではなく、自立生活を希望する人たち。自由と引き換えに、リスクや責任を負うことになる自立生活は、彼らにとってまさに“命がけ”のチャレンジだ。家族との衝突、介助者とのコミュニケーションなど課題も多く、時に失敗することもある。しかし、自ら決断し、行動することで彼らはささやかに、確実に変化をしていく──。 」


昨日参議院会館での試写会を通院がてら見てきた。沖縄のおばあの講演以来の参議院会館である。東京中マスクだらけだが、ここはマスク着用が少ない。殺菌処理エアコンが館内に設備されているのかもしれない。

会場の講堂は8割は埋まっていたか。
30台以上の電動車椅子が遠慮がちに走りまわっている。


「インデペンデントリビング」
https://bunbunfilms.com/filmil/

なにもカタカナ英語を使わなくてもと始め感じたが、これは恐らく日本語では表現が曖昧になるからだろう。カッコつけてではないな。「独立」「自立」は辞書には在っても日本社会では非常に弱い言葉なのだから。同調圧力というのか、空気を読めという論外の愚劣な表現がまかり通る社会では、その二語は死語に等しい。従属、依存の、いうならば無自覚的奴隷となる日本人が多いなかで日本は徹底的に腐敗してきた。安部一派の唯一の功績はそんな日本社会に充満する長年の隠れ腐敗を一気に露わにしたことである。隠しようがないほどに。

子殺し次官は称賛されレイプ疑惑人は検挙されず、母子殺害の池袋暴走老人飯塚はぬくぬくと暮らす。それらは官邸から発する腐敗菌の伝染余波である。猛毒。

しかし、そんな日本社会の逆境のなかで、「インデペンデントリビング」に登場する人たちの明るさは美しい。
やはり大阪の文化的土壌は日本のなかで異彩を放つ。横山ノックだとか維新だとか自民党だとか公明だとかに騙されながらも、しかし、大阪人は個性を発揮する。その個性とは独立精神であり自立精神であろう。

だから大阪は昔から福祉において先進的であった。30年近く前に大阪のグループホームなどを見学したが、それを実感したものだ。その先進性とは彼らの気質であろう。必要であれば突き進む。

監督は田中悠輝。

 「SEALDs(安保法制に反対する学生たちの団体)を創設した奥田愛基君が大学の2年後輩で、よく官邸前抗議後にクラブイベントで勉強会をしていました。彼のお父さんが抱樸の理事長の奥田知志さんで、北九州の実家にホームステイした時、「ホームレス支援に興味ないか? おもしろいよ」と声をかけてもらいました。」
https://maga9.jp/190327-5/

田中悠輝君。根っからの福祉活動者である。

「ありがとう。遺影にするわ」

彼が北九州で困窮者支援をしていた時、元ホームレスのおじちゃんに言ってもらった言葉だという。この言葉が彼の胸に深くしみ込んでいたからだろう、この映画は誕生した。

若い人たちが頑張っている。
重度の障害を持つ若い人たちが「NPO自立生活夢宙センター」や自立生活センター「ムーブメント」を立ち上げている。大阪の繁華街の真ん中で車椅子に横たわりながら堂々と咥えたばこで悦に入ってる渕上さん。アンパンマンをヤクザにしたような平下さん。強烈な個性的魅力は能力であり意思の強固さの証である。やはり・・・大阪人なのだ。

魅力的な、障害当事者(と彼らは呼ぶ)。
それは私もよく理解している。養護学校で一時勤務していたから。地獄的暗愚の「教員」集団の中で良心的教員が二人も自殺や不審死に追い込まれる環境のなかで、彼らは魅力的に「生かされて」いた。自立など程遠い。

「人生をかけて人を笑わせないかん!」

その笑いの背後に海のような涙があることを私は知っている。
アンパンマンヤクザ平下さんが言う。骨格形成不全症の彼は全国自立生活センター協議会代表でもある。

「この仕事をやるために俺は頚損になったんやと思えるように今はなった」

自立生活センター「ムーブメント」代表、咥えたばこの渕上さんが言う。

「仕事とか、わかることは想像の域でしかなくて。ただ、どういう生活がいいのかを考えていくことが大事で、そう思ってくれる人を一人でも増やすってことが自立生活に近づく方法」

という骨格形成不全症当事者で自立生活センター「リアライズ」代表の三井さん。

「親はどっかで泣いていると思う。ごめんねって言うといてください」

という、阿部明日香さんのお母さん。怖く厳しいお母さんです。

「この環境(閉塞された前の施設)を受容するってことが、障害を受容するってことなの?」

という多発性硬化症当事者の大橋ノアさんはアメリカに留学していった。



ごく一部を抜き出してみたが、とても彼らのエネルギーをまとめることなどできない。ご関心のもたれた方はぜひ映画館でどうぞ。東京では渋谷ユーロスペースで来月14日から。


「障害とは、周りの人が手助けしてくれないこと」

これは昔、札幌の少女が示してくれたこと。本質を言い当てている。

最後に、れいわの舩後参議院議員が登場し、彼のメッセージが代読されたが、誠実である。同じ苦悩を味わってきたからだろうか。あの文章は総理大臣も書けない(当たり前、という不幸)。

 

f:id:pakin:20200221140428j:plain