pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

古い珈琲店


今朝の起床は5時15分だった。


以前は完全な夜型で3時過ぎる就寝は普通だった。

定年前の最後の勤務校が定時制だった事もあるが、実は学生時代から夜型だったのである。昼夜逆転。大学のロックアウトがきっかけとなり、奥手の私は漸く自分の世界に浸り切る事かできた。世間ではそれを自堕落な生活と呼ぶ。


更に初めての勤務校が定時制で生活リズムは変わらぬままだから、その後の日中の勤務先では眠気との闘いが一時期辛かった。


今の早起きはもちろん勤務を始めたからである。しかしその勤務日もコロナのせいで半減の週2回、しかも中身がない。

 

先週、見回りとかで一人で校区内を歩いた。初めての土地を歩くのは好きである。主に公園を巡り、子どもがいたら見守りや声掛けをすれば良いだけの話なので私には散策なのである。

 

都会の住宅地、この時期、薔薇を見事に咲かせている庭など眺めるのも愉しい。

歩き回り休みたくなったところで目の前に珈琲店が出てきた。いやに古ぼけた狭い間口、お!これは良いかも!と、吸い込まれるように入った。カウンター席のみ。使い込まれた調度品。誰もいない。

 

マスターもいない。何度か呼んだらかなりの年配の男性が奥のトイレから現れた。
痩せた白髪の眼光の強い老人である。

今日の珈琲、なんて張り紙があったが、マスターは構わず、ブレンドがありますよ、と先を越して言う。苦味の珈琲です。

じゃあそれで


マスターはできた珈琲をスプーンで一口味見してからカウンターに置いた。

美味しい。私は酸味の強いのが一番好みだが、こんな爽やかな渋味も嬉しい。

随分古いお店ですね

マスターは微笑んで話始めた。開業50年は過ぎたという。奥さんと2人でずっとやってきた。今日彼女は休んでいる。

テレビ取材は一切断ってきた。常連さんに迷惑だろ?

そうですね。普通の店主なら飛びつく話ですが。

マスターは微笑んでいた。そぞろに話は進んだ。学校の話になった。

 

私なんかね、よく先生に立たされたもんですよ。バケツ持って。叩かれた事も何度もありますね。アザを作って帰ると母親が、またバカをやったな!とゴツンで終わり。しかし楽しかった。担任の先生とクラス皆でよく遊んだな。先生も若くてね。去年も同窓会やったよ。

互いに笑いながら話に興じていると時間が来た。


そうそう、途中に、歌会幹事さんから電話が来た。6月に延期していた歌会を更に延期するという連絡である。東京に行くのが怖いという女性の話とか。巴琴さんはいつ頃なら歌会可能だと思います?そうですね、最短秋以後でしょう。彼女が力を落として頷く様子が痛々しい。多分年内は無理なのだ。互いにそれは分かっている。私の地元の句会も無期延期である。

 

そんな電話の話もマスターに伝えた。
マスターも頷きながら、コロナは怖いですよ、気をつけて下さいと言う。

30分の休憩時間はあっと言う間に過ぎた。この店、帰り、電車に乗る前に一服できる。しかも雰囲気が良い。古ぼけた狭い店内に窓から入る光が丁度良い影を店内に生む。マスターは超のつくベテランである。その日も一万歩は歩いたか。

さて、明日また勤務である。また仕事やってますという理由でやらされる見回りだ。アハハ。

 


庭には芍薬や石楠花、薔薇なども次々に咲き出した。モン太郎は昼寝である。

 

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