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五島の教会にて
悲しみを知るものありやこの国の悲しみにゐて八月の雨
祈りとは捧げるものなり見せるに非ず耐え抜く者の祈り尊し
燃ゆる川燃ゆる木立の燃ゆる空広島長崎灰燼の夏
轟音に窓外見ればきのこ雲海軍病院の父は虚脱す
(呉停泊中撃沈され奇跡的に同僚に助けられた父の話より)
祈りさへ忘れ五輪や疫病の猖獗無様極まる國よ
自殺せし殺されし子の魂よ憐み給へ生ける大人を
祈ることそれのみの夏祈れよと蓮は咲くなりこの夏のため
我が心帰り来たれやこの時に緑なす山碧き風吹く