pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

竹取幻想44

・ ゆっくりと通りを楽しみました。 成清の申すとおり、いろんな店に珍しい宋の品物が溢れています。書画骨董や陶磁器から書籍や文具、そう、硯の見事なものも目にしました。薬も多様な種類、お酒や食材も。兼綱さま康忠さまも楽しそうにあちこちのお店を覗…

竹取幻想43

・ 寺江の、藤原秀衡さまのお宿での一夜の語らいは、文徳さまも交えてあの後も賑やかに続いたのです。その前夜にもまして楽しく嬉しいひと時でした。酔い心地のこころよさ、そんな中で皆さまは決して乱れず上下分け隔てなく、ふた心ない歓談に興じていらっし…

竹取幻想42

「貴公の店は繁盛しておる上に人手がなかろう。貴公の人品、いや失礼、見させてもろうたがなかなかの人物とみた。安心して預けられるわい。どうじゃ」 彼は真っ直ぐな視線を私にぶつけてきました。 「はい、ご覧の通り人手がありません。その子が手伝ってく…

竹取幻想41

朝、雨は上がり水色の空が見えていました。 堀景光さまに見送られながら、草にしたたる露を踏み分けて泊りまで歩きます。文徳さまは荷車二台に昨夜の調理器具や残りの食材などを乗せ、お店の若い使用人四人と一緒に運んでいらっしゃいます。見るからに幼い子…

竹取幻想40

・ 世の中は夢かうつつか うつつとも夢とも知らずありてなければ このお歌は古今集の中の一首です。どなたがお詠みになったのかは定かではありません。 夢かうつつか・・・私は、私達はその境をどう見ているのでしょうか。実はそこに境などない、「ありてな…

竹取幻想39

・あの不思議な音の波がまた押し寄せて闇を満たします。 あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな 和泉式部様のお歌が思い起こされます。 あらざらむこの世のほか・・・私はもうこの世にそうは生きてはいないでしょうね、彼岸へ旅立…

竹取幻想38

・ そうでしたか、良いことをお聞しました。 こころざし、久しく聞かなかった言葉です。以前、源頼政さまや平忠度さまに一度お聞きしただけでした。士に心と書いて志じゃ。士とは武士という意味だけではない。願いを持って前に進んでいくという意味じゃな。…

竹取幻想37

「はい、私ももうよい歳でございます。これからの自分のなすべきことを思案する日々ですが、なにか私が宋と日本に貢献できることが見つかればわが喜び他のものはありません。 一年の計は穀を樹うるに如くは莫く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計…

竹取幻想36

・「そうでございましたか。文徳殿、まさにいたる所の青山あり是る処の青山 骨を埋む可しの人生ですな。感服いたした。」競さまが盃を傾けながら仰います。「先ほどの清親が吟じた『涼 州 詞』、あの詩を文徳殿は泣けてくると申された。万感の思いが詩句から…

竹取幻想35

・「お尋ねしてよろしいですか。史文徳殿はなぜ我が国を選んだのですか。貴国は西に西陵、吐蕃や天竺、北に金、高麗、南には大越など多数の国と接していますが。」 宿の差配役の景光さまが居ずまいを正してお尋ねになります。「はい、歴史書の勉学やらもして…

竹取幻想34

・「しかし・・・なんだな・・・袁忠・・・お主・・・ただの料理人ではないな・・・」 康忠様が盃を飲み干しながらそう語り掛け時、座が一瞬静まりました。兼綱様は直垂の襟を正しながら袁忠さんを見詰めますが、お顔は微笑んでいらっしゃるようにも見えます…