pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

竹取幻想77

「佐伯景弘殿はな、儂が知る限りその人徳に及ぶ者はおらんの。文字通り天空海闊なるお方での。彼の陰口は聞いたこともない。実際儂は何度か会っておるが温厚篤実。神に仕える者として佐伯殿ほど相応しい者はそうはおらん。ただひたすらに神様に仕え社を守る…

竹取幻想76

終章 一 厳島記 舟のスクリーンが遠くの銀河をまだぼんやりと鈍いスペクトルで映し出している。無数の星々は相変わらず点滅しながら水晶にろ過された光のように眩くあらゆる色彩を放ち、光は舟の天蓋を流れるように滑っていく。 僕はずっと小侍従の物語る話…

新句会第一回

・ 雨戸開け又閉め過ぐる春ひとり 花眼 糸切れし手毬やそっとたなごころ 花眼 ショパン聴く窓に二月の空昏るる 撫子 待春や一筆箋に書く便り 撫子 挨拶を交わす坂道着ぶくれて 撫子 一葉の青きに逝きしたけくらべ 夏生 猫眠る庭に生えたるフキノトウ 夏生 寒…

竹取幻想75

・ 翌朝、まだ薄霧の流れる道を草露に濡れながら湊に向かいました。兼綱さまはおろか日ごろお話し好きな清親さまやつわぶきまでみな無言で坂を下りていきます。思うところがそれぞれに深いのでしょう。私も同じです。いよいよ厳島に着く・・・都を出発した時…

竹取幻想74

・ なかなかに夢にうれしき逢ふことは うつつに物を思ふなりけり 西行 まだ夕日の残照が海を茜色にそめあげ、さざ波があやに輝くなか、切串の湊を上がり島の長老のお出迎えで大歳神社に案内頂きました。「小侍従様とか、都の高貴なる方をわが賤の家にお泊り…