庭に出る。
花の季節。
本当は新緑の山歩きをしたいがまだ我慢の日々。
我が家の庭も新緑と花の世界だ。
肋骨の痛みもここ数日和らいできた。本当は山歩きしたい季節だが、我慢して庭で愉しむ。
ドウダンツツジ、満天星と、かの国では呼ぶらしい。なるほどこの一木立の姿は満天星に相応しい。こぼれんばかりの、鈴蘭に似た小さな白い花が浅緑の葉に負けじと鈴なりに咲き、呆れるほど美しい。晩秋には燃え上がる朱色となる。その下には自生した鈴蘭が可憐。ヤマツツジは淡紅の日本画の花。柿若葉の下には花を終えたスノーフレークの群れが濃い緑の葉を茂らせている。玄関前には君子蘭が3つの鉢に朱色の花を輝かせている。香り高いのはキンジアナムだ。白い花を沢山つけている。紫蘭はそこかしこ真っ直ぐな茎先に紫の花をつけている。そしてこれから咲き出す薔薇が蕾を大きくしている。
そうそう、庭の景としては野鳥を忘れない。蓮の鉢には様々な野鳥が水を飲み水浴びに来る。近年よく見られるようになった小太りの蛾眉鳥はバシャバシャ派手に水浴びする。深山幽谷の蛾眉山からとった名前か、声が美しい。そして四十雀は門柱の上に置いた狸の陶製の置物の中でせっせと雛を育てている。狸の背に開けられた穴の大きさが丁度良いようだ。
こうしていると熊谷守一という画家を思い出す。文化勲章も辞退し、晩年は庭の中に籠もって家の外に出ずに画業を続けた男だ。以前ブログに彼を描いた映画について書いた。
『モリのいる場所』
庭の中で世界を観た男。絵のモチーフとなった虫や猫も水滴も彼の宇宙だ。凄絶な前半生から「仙人」となった男だ。
ソファに横になって、途中うたた寝もしながらスマホで書いていたら間もなく夜になる。