pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

小晦日から大晦日

・ www.youtube.com 今年も加速度的な速さで終わろうとしています。何という速さか。これは老人の特権的感覚かもしれません。死と生の狭間の薄皮一枚に生きている感覚で、年金生活者のお気楽ぶりですが、では若い人たちは・・・以下5年前の晦日あたりに書い…

竹取幻想18

僕達を運ぶ舟は相変わらず無音の宇宙の闇を滑っている。 なにか・・・懐かしい・・・はるか遠くに忘れてきたような大事な絵・・・懐かしいという感情が僕を虜にした。かつて暮らしていた惑星のドームの思い出よりずっと深い感情が。こんな感情が僕にあったん…

竹取幻想17

僕は園城寺境内に燃え上がる篝火の爆ぜる音を聞いていた。宇治平等院の前で繰り広げられる鬼気迫る戦いの凄まじさや武者たちの鬨の声を聞いた。須磨の浦の静けさと翌日の一之谷の戦いを見ていた。人間がその肉体と精神を懸けた姿だった。そしてそれらの情景…

竹取幻想16

寿永三年二月四日 我が一門が厳島神社への納経の栄華からこの都落ちよ。随分長き月日の経ったように思えるし、また一瞬の出来事のようにも思える。思えば木曽義仲殿の倶利伽羅峠での奇襲策によって我が軍は一挙に崩壊し太宰府まで後退せざるを得なくなった。…

竹取幻想15

吉野西行庵 「平忠度の物語ること」 われ武人としてこの生を享けしもこの世の儚きはもとより、末法の世のあさましき人の所業、わが滅び行く一族にとどまらず、貴族も源氏一族も皆同じなりと断ず。 長承の飢饉はその惨状聞き及ぶのみなれど、久寿の飢饉養和の…

竹取幻想14

「小侍従の語ること」 平等院の御名を思い出し、思ひがけず頼政様を思い起こしました。遠い昔の想いとはいえ私の心の奥底の灰の中に熾火のように残っているのです。遠い空の彼方においでのあなた様にお伝えするには己の秘すべき事柄にも少しは触れねばせっか…

竹取幻想13

「源頼政独言」 治承四年皐月二十五日深更園城寺山門の波打つ木立の梢の先に瞬く数知れぬ星ぼしの明かりの鳰の海に降りしき、ときおりの風が一対の大きなる篝火をいっそう巻き上げ、焔のはぜる音が響きけり。 焔よ。奥深い忿怒の相貌か火生三昧紅蓮の焔か不…

竹取幻想12

此の時、以仁王の宮は御歳三十二になられていました。 小侍従独白 ゆめなるかゆめなりしか。われ若きころ幼き宮以仁王様に筝をお教え奉りぬ。かわゆげなる御指にて弾き給ひきよらかにお笑ひ給ふ。懐かしきあまりにも懐かしき御姿思い出すにもあはれなり。 光…

竹取幻想11

そうです。では話を続けさせていただきましょう。再び小侍従の声が聞こえてきた。もっとも辛き事は愛別離苦の嘆きです。会者定離の世とは申せ、家族や愛する人の死を受け止めなければならない辛さ、残る辛さをお分かりください。 「源頼政様のこと」 平等院…

竹取幻想10

僕の脳に当時のデータが滝のように落ちてくる。彼女の言うつらきことを歴史や文物で探った。比較的穏やかに過ぎ去ったと見える平安の世が途端に凄惨な陰画を持っていたことに気づいた。小侍従とその時代1096 永長一年一月、永長地震東海、東南海の地震、津波…