pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

竹取幻想9

夢 六 いつの頃だったでしょうか。おぼろげな記憶の中に一つの物語が浮かんできます。甘い花のかをりをのせた風が吹き渡る中で母のお話下さった物語です。 中将姫・・・遠い天平の御世のその御方の物語に心を奪われたのでございます。継母にいじめ抜かれなが…

竹取幻想8

夢 五 貴方にも聞こえますか。緑なす山々の声や吹き渡る青嵐の声を。母に抱かれて眠っている時に聞こえてきた声は雨だれの声。跳ねるように踊るように耳元をくすぐりました。また月明かりの声が木々や草花をしっとりと潤すように身に染みてまいりました。 声…

竹取幻想7

夢 四 はるかに未来の遠い空の彼方においでになる貴方に、この平安の皐月の青空は如何お見えになるでしょうか。私よりずっと後に偉業を成し遂げられた世阿弥様のお言葉をお借りし次なる拙歌を座興に作りました。春、花の溢れる頃。 心より心に伝ふ花なれば …

竹取幻想6

夢 三 宇宙の漆黒の闇の中に眠る僕の脳裏にひとひらの花びらが舞い降りてきた。それは始め一つの小さな光の粒と見え、次にはおびただしく一筋の川の流れと見え、やがていく筋も大河のように流れるとみると、ゆっくりと回転しながら花は無数に数を増しつつ大…

竹取幻想5

夢 二 月いづること その眩暈のような天道の指し示す一瞬に二上山が確かに震えたのを僕は見た。かすかに震えたのである。その山と天との昏い境に大きな弦月が静かに顕れてきたのであった。弦月は張りつめた弦の、刃のように濡れた熱い線で、すべての波長の光…

竹取幻想4

夢 一 父さん・・・隣に寝ていたお父さんがいない・・・舟は亜光速で進んでいるが、まるで宇宙の中を静止しているかのようだ。時間係数が限りなくゼロに近づいている。無音で闇に浮かぶ一つぶの小さな明かりの舟・・・父さん・・・さっきは時間の話だったよ…

竹取幻想 3

時を越えて旅すること 西暦3575 想像してごらん、と父は言った。これから1000年後をと。舟の透明の天蓋に真っ暗な宇宙がどこまでも続く。僕達の舟は静かにそのなかを航行している。遠くにsombrero-galaxyがぽつりと孤独な瞬きを送っている。舟の中で…

竹取幻想

序 弓張の月にはずれて見し影の やさしかりしはいつか忘れん (山家集) 黒々に垂れこめる雲と畳々たる山の端から漏れ来る赤き光の矢のごとき一筋に震撼する刹那のあはれよ。破鏡する古人の思ひの脆きさまにも似たるその玉響の清らなるふれあひのおとずれよ…

因果倶時 改稿

因果倶時 春の花風に乗りてぞわが宿に 夢のひととき舞い散らむかな 俗欲まみれのぐうたらなぼくが言葉を一つ拾った 拾うとバチが当たると幼い時、母に言われたことがある 捨てるのはいい? 捨ててもいけない大事になさいお米一粒汁一滴大事になさい 拾った言…