pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

竹取幻想65

・ 「お船は楽しい?」と聞くと首を縦に振って、「うん、楽しい」と答えます。 何が一番楽しいと聞くと、「みんな!綱登りもやったよ!」と元気に答えながら、「一番はねえ・・・」と言って口ごもります。 「何?教えて、知りたいな、菊丸が一番楽しいことは…

竹取幻想64

・ 子どもたちの声が下から聞こえてきます。手の空いた船員さんに案内してもらっているようです。見ると甲板の帆柱に集まっています。複雑な帆縄の操縦の話に真剣に耳を傾けているのですが、そのうち一人がお話に飽きたのか、帆縄にぶら下がるとするすると登…

竹取幻想63

・ 貴方・・・はるか天空の彼方におられる貴方に、飽きられずお聞きいただくには私のまことに拙い話で心苦しいのですが、小侍従と呼ばれたこの私の、ただの女房にすぎぬ私の人生の中で、僅か数日の間の、儚くしかし私にはかけがえのない経験を、ほんとうの喜…

竹取幻想62

・ 結局私は勧められるままに清盛さま湯屋に出航まで泊りました。なんともあの湯浴みの魅力には抗いがたいのでした。兼綱さまがおっしゃられた、癒されよという事の意味を初めて知ったのです。ありがたいことです。本当に、私は皆さまのおかげで身も心も軽く…

竹取幻想61

・ 「文徳殿、また突然の話で申し訳ないが。ご存じのように私どもはこれから厳島神社参拝に参る。先ほど小侍従様と話したのですが、如何かな。我らとともに参拝されては」 兼綱さまがお話になられますが、それは私からさきほど兼綱さまに相談したことなので…

竹取幻想60

・ 「貴国での生活で安全が保障れていたとは良かったな。まずは一番の不安だったろう。しかし、子供らにとって異国、たしかに幼い子まで大勢引き連れて行く不安は大きいだろうの。文祐は分かるだろうが、幼い子に、至る処青山有りとは言えぬからな。しかしな…

竹取幻想59

・ 「申し訳ありません。理屈ばかりこねて。なに、簡単に申せばこの子らが可愛くてしようがないというだけの話した」 文徳さまは照れ笑いです。 いえいえ、貴重な良いお話を頂いて嬉しい限りですよ。これほどまでに心惹かれるお話はありましょうか・・・西行…

竹取幻想58

・ 「日本に来て以来も店に忙しく余裕はありませんでした。忙しく資金を蓄える目的は十分果たせたのですが、西行様と子どもたちとの出会いで私に欠けていた大きな問題に気づかされたわけです。人は何によってみたされるのか。それは私にとって子どもたちでし…

竹取幻想57

・ 文徳さまが私の前に座りました。 「小侍従様、今日は私どものためにお時間を戴いてまことに恐縮の次第です」 間近で文徳さまのお顔を拝見するのは初めてです。柔和な微笑と誠実さ、深い知性に惹かれた私は、この際だからと多少不躾ながらいくつかお尋ねし…

竹取幻想56

・ 賑やかになりました。次第に座もくずれ、あちこちで盃が交わされています。文祐さまも徳利片手に回っています。おチビちゃんたちは輪になって食べるのに夢中のようです。皆さま先ほどの今様の話で盛り上がっていらっしゃいます。 「日本の今様と呼ぶ、こ…