pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

世界が引き裂かれる時 KLONDIKE



https://unpfilm.com/sekaiga/


1、
原題:「KLONDIKE」の由来 
    監督・脚本:マリナ・エル・ゴルバチによる解説

「ドンバスは、石炭採掘や鉄鋼など、ソビエト連邦後の宇宙で最も豊かな工業地帯であり、ロシアからヨーロッパへのガスが通る戦略的な場所であると同時に、多くの旧ソ連の指導者の出身地でもあります。そしてマレーシア航空17便襲撃事件が起きた地域でもあります。そのドンバスと、19世紀にゴールドラッシュが発生したカナダのクロンダイク川を重ね合わせ、土地を力尽くで奪い、手に入れるというロシアの行為は、時代に逆行する、古い時代に後退する行為だと言いたかったのです。また特定の状況や時代を超えて、このテーマに世界的な広がりを持たせるような意味をもたらしたかったのです。」

監督はゴールドラッシュというまさに狂気としての欲望の象徴的事象を題名に込めたのだ。先住民を蹴散らし10万人がクロンダイク川に押し寄せたという。

2、
監督は2014年のクリミア併合後の「マレーシア航空17便襲撃事件」(プーチンが画策した)からドンバス戦争が始まったと指摘している。本作は2016年から脚本を書き始め2020年から撮影。

ーロシアのウクライナ侵攻が始まる直前の2022年1月、第38回サンダンス映画祭ワールドシネマ部門で監督賞を受賞し、続く第72回ベルリン国際映画祭でパノラマ部門エキュメニカル賞を受賞、さらには第95回アカデミー賞®最優秀国際長編映画ウクライナ代表にも選出されるなど世界各国で41冠の栄誉に輝く。ラスト15分は、深まる民族間の衝突、差し迫ってくる戦争の緊迫感に圧倒される。のちに現実となってしまうロシアのウクライナ侵攻を予見させる衝撃の問題作。ー

なるほど、その受賞ぶりが納得できる素晴らしい作品だ。感動を美と呼ぶならなんとも美しい映像に溢れている。無残に破壊された壁の穴の向こうに広がる美。

3,「すべての女性に捧げる」

ー彼女は生命を生み出し維持するエネルギーを象徴しています・・・(彼女)の行動はすべて生まれてくる赤ちゃんのためのものです・・・彼女の生存本能は、戦争よりも強いー マリナ・エル・ゴルバチによる解説

この解説で思い出した。
プーチンを怒らせた2014年のマイダン革命は「尊厳の革命」と呼ばれている。子どもの自殺や子殺しが横行する、尊厳の欠片もない国に生きている者にとっては余りにも眩しい「革命」だ。


現代は戦場がリアルタイムでそのドローン映像が見られる時代。
ドローンの下、兵士がまるで小さな虫のように地面を動き回りそして動かなくなる。もう何万人が戦死したことか。キチガイに刃物という表現があるが、キチガイに権力や核となると国民規模での修羅場が現れる。ウクライナだけではない。シリアもアフガンもイラクやアフリカも同じ。アフガンではすでに200万人が死亡している。シリアでは50万人・・・

欲望による狂気。人類は根気強くその狂気に対峙していかねばならない。マリナ・エル・ゴルバチ監督はそう訴えているのだと思う。そして、それがウクライナの強さなのだとも思う。

加えて気候環境という大問題。これも欲望と狂気の結果だ。解決できなければ人類は滅ぶ一択となる。

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