pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

猫と満月と寝言


玄関の扉を開けるとモン太郎が私の姿を見て門の方へ駆けて行った。ついていくと外に出ている。
家の前の公園に誘っているのだ。

そうだった。6月から雨と炎熱の日々で公園で過ごす時間はなかったな。

公園のベンチに座るとモン太郎は隣のベンチに座った。

みんみん蝉が盛んに鳴き交わしている。
蝉も今夏の天候には辟易してただろうね。

今週はそんな事で久しぶりに山散歩を再開した。3ヶ月ぶり、衰えたか少し気になったが、4日前の朝の青空と爽快な風は否応なく身体が反応したのだった。

「この山、年金山と呼んでるですよ」

多峯主山へ登る手前で2人の老人と少し立ち話をした。

なるほど見晴台は老人ばかりだ。しかし、たまに若い人たちもいるが、当たり前、平日に呑気にハイキングなどできるのは老人くらいだろう。

背の高い老人が、そう言いながら私の年齢を尋ねた。

「68です」
老人は期待した答えを聞いたかのように喜んで

「若い!この人は83歳!アハハ、私は74ですよ」

まぁいいや、83歳はまだ少し休んでから登るというので先に登って行った。

台風一過の道には桜の倒木が道を塞いだり、虫たちがせっせと横切ったり、ヘビまで慌てふためく様子で目の前を通り過ぎたり。

虫たちを踏んづけないよう歩いたが、完全とは言えない。踏んづけられた虫たちにはこの世の生の不条理と感じる間もなく昇天してもらうほかない。

長雨のせいで茸もあちこち、赤や白の彩りを見せている。

頂上で、と言っても標高300足らずだが、奥武蔵から遙かに見渡す眺望は久しぶりの青空の下気分が良い。お茶を飲んで握り飯を食べていると、ちらほら人が増えてきた。

単独ハイカーは少ない。大概が数人連れだが、男共のグループは欝とおしい。なぜこうも下らぬ話を大声でやるのか、耳が遠いのだろうが、嫌になるのでさっさと降りた。

下り道て単身のハイカー何人かとすれ違うが、挨拶を交わす人たちは気持ちが良い。


そんな3日間であったが、昨日は急に冷えた日となった。
帰宅して昼寝をしたが、Tシャツ一枚で寝たのが祟って風邪を引いた。残っていた一年前の薬を飲んで早々に寝た。

午前0時過ぎてトイレに起きた。
ベッドに明るい光が差し込んでいた。
そう、満月。
日中から夜まで曇りとなり諦めていたが、すっかり晴れ渡った夜空に煌々と輝く満月は、毎年見慣れているはずなのだが、不思議な感覚に囚われた。
人の感情など全く寄せ付けない厳しい月光。
古来人々が月への思いを表白してきたが、それはこの凛たる拒絶感を得ていたからかも知れない。
その拒絶感は死の感覚や無常観を呼び起こす。
一瞬また私は消えた。
ベッドに再び横になるとモン太郎が潜り込んできて腕枕に頭をのせて眠り込んだ。


月面着陸とかまた身も蓋もない狂騒が始まりそうだ。科学の粋だと。地球上の悲惨と不幸を尻目にねぇ。政治が絡まないなら良いが政治が絡んだ途端にそれは恐ろしく下卑たものになる。
尤もその前にオリンピックという狂騒が始まる。馬鹿じゃなかろか。身体能力の粋だと。どう逆立ちしても猿のオトモダチ人間の身体能力など、脇に座っているモン太郎には遠く及ばない。まぁ、ただの世界規模の見世物小屋のショービジネス。これも政治が絡まないならまだ良いが政治介入は露骨。バカを通り越して狂気だな。ん?狂気じゃない?連中の目を見てみな。狂った目つきはすぐ分かる。


おっとと…長くベンチに座りすぎた。
いつの間にかモン太郎が他所の猫と向き合って不穏である。

 

写真
モン太郎

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多峯主山の嶺筋にある古い宝篋印塔。
なかなか立派。常磐御前の墓の跡に建てられたという謂れがある。可能性はあるかもね。
伝説もデタラメも含めて興味深い。我が愛する小侍従が北九州の地に下賜されたなどという伝説はさすがに無理だから、小侍従という職名の別の女性というか。

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蓮の花、これも今夏は諦めていたが、ひと月遅れで咲き出した。7つ目の花。最後の花。写真の花は昨日。今朝は4日目だ。よく保ってくれたな。さすがに開く力は残っでいない。閉じたままだ。そして花弁一枚ずつ落として行く。

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