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春コート娘の還暦に集いけり 陽清
道教へくれし親切街薄暑 陽清
緑陰や一茶の句碑の自然石 陽清
五月晴いつか私も千の風 淡雪
笹舟と走りし小川夏来たる 淡雪
(今は無く)
初夏の風バーベキューの匂う川 夏生
日和田山苗植える子ら夏光る 夏生
もの憂さも気怠さもよし春の暮 巴琴
赤薔薇の花の重たき走り梅雨 巴琴
「春コート娘の還暦に集いけり」
前回保留にして推敲された句。
娘さんの還暦の祝いに集まる人たち。同じコートでも春コートとなると軽やかな装いで心も軽くなります。それにしても還暦が娘さんとは、作者は80歳を超えていらっしゃるのでそうなりますか。話題は自然と長寿の話で盛り上がります。そのうち、お孫さんの還暦祝いの句になりそうです。
「道教へくれし親切街薄暑」
なんでも電車を乗り換え遠くの駅で下車しその地の電器店に行かれた時、初めての街で道に迷いそうになって道行く人に尋ねたら「私の行くところと同じ道なのでご一緒に」と。その親切に会えた嬉しさ。そんな人情は私も経験しており、まだ健在ですがやはり元気で外に出ないと会えません。
「緑陰や一茶の句碑の自然石」
緑陰 一茶句碑 自然石と綺麗に結びついて、爽やかな初夏の探訪シーンが生き生きと描かれます。作者は結句にご苦労されたようで、ようやく「自然石」に落ち着いたとか。安易に妥協せず語彙を探す努力に敬服します。
「五月晴いつか私も千の風」
なんでもNHKの公募条件で「千」を使った句をと。私はTVも俳句雑誌も知らないので、そんな公募があるとは知りませんでした。作者の「千の風」になりたい願いが五月晴の爽やかさに呼応して綺麗な句です。
「笹舟と走りし小川夏来たる」
今は無い懐かしい光景・・・子どもの頃は夏が嬉しくて待ち遠しいものでした。笹舟、草笛・・・たくさんの遊びがありました。小川もなくてはならない存在。一日中戸外で遊びたおして夕暮れに帰宅。今の子らは家の中ですかね。「可哀想」という声が上がります。そういえば「浮足」とか呼ぶ異常もニュースになってました。足指が地面に着かないらしい。幼いころから裸足で外遊びしていればそんなへんな身体にはなりません。
「初夏の風バーベキューの匂う川」
友人が、器具はセットするので、貴女は肉や野菜を用意してとか、ちゃっかり友人さん。新製品。やはり新緑の木陰での爽やかなバーベキュー。「バーベキュー」も最近夏の季語になったとか。バーベキューは一年中やってますがね。従って、そんな認定は無視。初夏がバーベキューの匂いと川の水の匂いに生き生きと描写されます。若々しさが匂う句です。
「日和田山苗植える子ら夏光る」
日和田山を背景に田植えの体験学習をする子供らの賑やかな姿が「夏光る」風景に映し出られて、大きな景色、一幅の絵。山も田んぼも水も夏の光にあふれて背後には日和田山が見守るように聳えています。
「もの憂さも気怠さもよし春の暮」
春の暮、となればその情調はすべてよしという感覚の句。すべて楽しみましょう。
「赤薔薇の花の重たき走り梅雨」
雨に濡れた新緑のなかに咲いた赤薔薇の風情を詠んだ句。ビロードのような花びら。雨の滴にうつむき加減に咲いています。
写真 韓国のみごとな紙工芸 いまはそれを陳列しいていた高麗駅前のお店も閉まったまま・・・残念。