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講師 大石紗都子武蔵野美術大学准教授
演題
「時代と空間を超える堀辰雄の”メルヘン”『羽ばたき』を中心に」
令和5年11月26日(日)午後1時30分~3時
於 軽井沢町追分公民館
以下レジュメより抜粋
はじめに 堀辰雄をとりまくイメージ
(1)時代の流行や情勢に敏感
(2)軽井沢を舞台とする作品
堀辰雄『羽ばたき』
①堀辰雄『羽ばたき』近年における再評価
・『羽ばたき』堀辰雄初期ファンタジー傑作集
・鳩山郁子漫画 『羽ばたきEin Marchen』
・杉浦幹治ージブリ『魔女の宅急便』
②作品の特性
(1)ジジの人物像
(2)『羽ばたき』における対比
ジジ/キキ
U塔≪死を象徴≫/フェアリ・ランド 《生を象徴してゐるやうに見えた》
③コミカライズにおけるアレンジ
(1)ジジとキキの関係性
(2)タイトルの不思議さ:ジジの"墜落”を描
く作品が『羽ばたき』
(3)結末の解釈
(4)原典をアレンジすることの意義
・表層的な換骨奪胎ではなく本質的な作
品世界の継承
(5)時間と空間を超えて 繰り返し蘇る『羽
ばたき』
・本文異動の例
・堀辰雄『プルウスト雑記』
・池内紀「強靭な人』
終わりに
2023年堀辰雄 没後七〇年
映画『風立ちぬ』上映から一〇周年
2024年生誕一二〇周年
拙論「堀辰雄『羽ばたき』の時代的意義と多面
性ージャン・コクトー、アンリ・ポアン
カレ、トポロジー」
1、正直驚いた講演内容でした。堀辰雄の研究者がいらっしゃった、しかも若い方が。『羽ばたき』は初期の短編で実験的作品だろうと浅はかな私は読みを誤っていました。大石先生は真摯に文学と向き合い、精緻な読みによって感動を与えてくれました。
『羽ばたき』にはその後の堀辰雄のすべてが内包されていると感じました。詩人の魂。美しく強靭な魂です。もう一つ、『羽ばたき』に表現されるジジが絶命の危機にある母の唇に接吻するシーンがあります。下世話な評論家の手にかかると無慚なことになりかねない表現ですが、堀が関東大震災で母の亡骸を求めて、父と隅田川のほとりを三日間も捜し歩いた様子が室生犀星によって描かれています。
https://purplepig01.blog.fc2.com/blog-entry-195.html母志気は辰雄を溺愛していた。その母を発見した時、堀の宿痾となる結核が宿っていた。『羽ばたき』に顕れたそんな接吻は堀の母への愛のオマージュだったのではないかと思われました。そしてこの視点はその後の作品においても確認したく思います。
2、鳩山郁子漫画 『羽ばたきEin Marchen』について全く知りませんでした。しかし大石先生のモニターに映し出された絵の美しさと作品理解の深さに驚かされました。
3、池内紀「強靭な人』
「すこぶる強靭な作家であって、ふつう思われているのとは、およそ対極にあるような人物」「堀辰雄はペン一本で近代日本の代表的な文学的聖空間をつくり出した。どうしてこれが弱々しい作家でなどありえよう」
まさに孤絶した作家、詩人。ゆえに多くの作家や評論家から悪意の批評が寄せられ、誤解を増長させた。小林秀雄なんかも粗悪だった。
大石先生にはまたご講演いただければありがたいです。
来年は生誕一二〇周年、記念館の皆さまのご苦労とともに講師の人選は大変でしょうが、宜しくお願い致します。
27日帰宅しましたが風邪で寝込んでしまい今日やっと書くことができました。38度3分でフラフラになるとは・・・