pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

たんぽぽ句会23回 12月15日(金)


 

記憶力補い合うてひなたぼこ    淡雪

 

今日もまた出来た事あり暦買う   淡雪

 

顔振の天望のぞむ冬の富士     夏生

 

今わかる父の優しさ冬野菜     夏生

 

正月の父の手作り器かな      夏生

 

雲間より遠く富士の嶺ピザランチ  陽清

 

福みかんたわむ古木やとある家   陽清

 

念願の佳き日を迎へ年暮るる    陽清

 

霧晴れて白き富士見ゆ奥武蔵    巴琴

 

寒菊や寂しき庭の艶の色      巴琴

 

 

記憶力補い合うてひなたぼこ 

 

美しい、ただただ美しい情景が浮かびます。補い合う、それは本来人間関係の基本ですが日常はややもすると、そんな基本すら省みる余裕を忘れさせます。作者は終末の淵から夫を救い出し、懸命の在宅看護でいまや普通食、散歩まで回復させていらっしゃる。

小春日のあたたかな光に包まれながら静かな会話のひと時を得る。補い合いながらの貴重なひと時です。

 

今日もまた出来た事あり暦買う

 

同じ作者の句。日々向上していく夫の姿。注意深く支える作者の喜びの一句。新しい暦が来年への意欲と希望を伝えてくれますね。

 

顔振の天望のぞむ冬の富士 

 

顔振峠にあるカフェの天望台から冬の富士がのぞめました。本句会初めての吟行です。当日12日は曇りの予報で雨の可能性もありましたが、カフェに着いた頃には次第に晴れて青空も広がりました。所々に雲を纏う山々も晴れ間から差し込む光に碧く輝いていましたが、その山々の間に富士まで見えて参加者一同感動しました。そんな感動の一句です。

 

今わかる父の優しさ冬野菜

 

作者の追慕の一句。過去にもお父さんへの追慕の句が何句もあります。とくにコロナ禍で病院へのお見舞いすらできなかった辛さ・・・そのお父さんが生前にご自分で収穫した野菜を子どもたちの玄関前に配っておられたそうです。それが当たり前と思っていた自分が「今」、それがお父さんの優しさだったと思いいたった句。亡くなったあとに気付く苦しさ・・・同じ経験は多くの人がもっているでしょう。そしてそんな思いを持てたことは実は幸運なのだと思います。そしてそれを気づかせ形にできるのが俳句でもあります。

 

正月の父の手作り器かな

 

同じ作者。そろそろ正月の準備に入った作者は棚の奥からお父さんが昔作った器を出して追慕の時間をかみしめていらっしゃる。手作りだから一層お父さんの姿が感じられますね。土の器は温かく手になじみ、お父さんはいつも作者の心に在ります。

 

雲間より遠く富士の嶺ピザランチ

 

これも先ほど述べた吟行の一句です。カフェのママの手作りピザ、美味しかったですね。雨後の瑞々しい大気と明るい日差のなか、奥武蔵の山々や遠くに富士まで眺めながらのランチは至福でした。「美しすぎると句が作れない!」と仰っていた作者も頑張って作りました!

 

福みかんたわむ古木やとある家

 

作者がお友達と近在を散歩なさっていた時の句。福みかんというのは私は最近になって知ったのですが小さいみかんです。数十年も生きた蜜柑の大木にたわわに実る福みかん。それを仰ぎ見るだけでも幸福ですが、作者たちはたまたま出ていた戸主の方におすそ分け頂いたそうです。あと二週間後、「こいつぁ春から縁起がいいわぇ~」となります。わくわく^^。

 

念願の佳き日を迎へ年暮るる

 

孫娘お二人が今年一斉にご結婚なさったとか。嬉しくてたまらない作者の喜びの一句です。なかなか結婚しない子を三人も抱えてもはや諦めの境地の私ですので、作者の喜びはよく分かります。そのうちひ孫さん誕生!となるでしょう。その時の句をまた頂きたいものです。善き一年でした!

 

霧晴れて白き富士見ゆ奥武蔵

 

同じく吟行の一句。そのまま。あ、カフェママのお話を付け加えておきます。生まれも育ちも顔振峠・・・だから?ではない。だから?どころの話ではないのです。なんと・・・ママは厳父の命令で小学校通学開始の時から、都心の大学通学までこの顔振峠から通ってらっしゃった・・・朝五時には家を出て・・・電車に乗るまで徒歩・・・毎日毎年ずっと。帰宅には今度は峠まで登ります。昏い山道を・・・大学までとなると往復8時間近く・・・ひゃあ~~!ギネスに載るぜ!で彼女は最近40年ぶりに槍ヶ岳に二泊で登ったとか。20キロくらいのリュックを背負って・・・恐ろしい体力。いくら何でも40年ぶり。鍛えるというのはこういうことか。「私、風邪もひいた事ないの」「あ、そうですか」コロナとも無縁。体重38キロ・・・年齢は多分私くらい。子どもたちよ、鍛えろ!部活なんて偏向的!しかし今じゃ無理。なんて貴重なお話もママからお聞きできました。

 

寒菊や寂しき庭の艶の色

 

鳥たちが運んでくれたのか庭に寒菊が咲き乱れています。美しいです。

 

 

今年最後の句会となりました。参加者の皆さま一年ありがとうございました。愉しさ第一、第二以下なしの句会ですが来年もまた宜しくお願いいたします。