pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

たんぽぽ句会第五回




ハンカチの手触りうれし誕生日   陽清


親切をしたりされたり夏の午後   陽清


雨戸閉め長きひとりや梅雨となり  淡雪


久々に夫の靴出す梅雨の晴     淡雪


夏空に巨大クレーン街動く     夏生


ボブの髪染めし肩より涼し風    夏生


奥武蔵けふは雲とも戯れり     巴琴


信濃路に蓄音機聴く堀辰雄忌    巴琴





ハンカチの手触りうれし誕生日

本当はスカーフのプレゼントだったようですが、季語が合わずにハンカチとなったようです。個人的にはあまり季語に振り回されなくてもよいと思いますが、作者は正統俳人でいらっしゃる。(やっぱり、スカーフ、の方が・・・)ともあれ、お誕生日おめでとうございます。先日は築地本願寺にも行かれたとか。ますますお元気です。


親切をしたりされたり夏の午後

駅での人情のひとこまを切り取ったあたたかな句。いいですね。こんな日常なら幸福感も得られますね。「したりされたり」人柄も浮かびます。


雨戸閉め長きひとりや梅雨となり

めちゃくちゃ暗い句、と作者はおっしゃいますが、私たちの暮らしは蛍光灯ではなく、明るければ良いというものではないですよね。たしかに毎晩、雨戸を閉めた家の中にひとりで長く暮らすのは辛いし苦しい時もあります。しかも梅雨・・・陰々滅滅の情景を対象化し見つめる作者の強い意志を感じます。そして次の句で明るさを取り戻していらっしゃいます。

久々に夫の靴出す梅雨の晴

梅雨晴れ間、より梅雨の晴れを選んだ作者。「間」より「晴」を最後に置くほうが「晴」を強く打ち出して私も好きです。うきうきとなる晴れの日。そして9か月ぶりに病院から自宅に戻られるご夫君を迎える準備に余念がないのですが、「靴出す」に嬉しさが込められているように感じます。


夏空に巨大クレーン街動く

実に大きく力強い、しかも爽やかな景色。現代日本はなんとも沈滞ムードが溢れていますが、作者の視点はそんな沈滞ムードを吹き飛ばしてくれます。巨大なクレーンを運転する人だけじゃなく、広い建設現場で汗を拭いながら働く人々の姿・・・現代では外国人労働者も普通に目にします。「街動く」躍動感のある素晴らしい表現です。

ボブの髪染めし肩より涼し風

ボブ?ボブマーリイ?くらいしか知らない私。髪型とは全く知りませんでした。というより私は女性に関わる知識は本当に疎いのです。尤も千円カットで衣服も無頓着な私・・・ということで、一つ利口になりました。そう言われてみれば作者の髪型も、お!かわいらしい!、と、おい、気づくのが遅い!すみません。そんな作者が涼しい夏風を受けながら街を歩く姿は颯爽と感じます。


奥武蔵けふは雲とも戯れり

梅雨の晴れ間、低山連なる当地は雲海に出会うこともあります。霧に沈む町・・・式子内親王のお歌そのままの景色・・・霧に戯れる時間はわずかです。


信濃路に蓄音機聴く堀辰雄忌 

辰雄忌という言い回しもありますが好きではありません。字余りでも堀辰雄忌とします。五月二十八日は堀辰雄の命日。堀辰雄記念文学館で「野いばら講座」を毎年開催しています。「野いばら忌」なら良いですね。辰雄忌…雑な発想。今回のその講座は「音楽で出会う堀辰雄~蓄音機・SPレコードで聴く」でした。
https://pakin.hatenadiary.com/entry/2022/05/30/143633




来月から句会は第三金曜日に変更です。