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かれてたつただ一もともさびしきは嵐の庭の尾花なりけり
樋口一葉
一昨日と昨夜の夜中の木枯らしの音は半睡の脳にすさまじく残った。久しぶりの暴風。当地は山の上なのだからか、ごうごうと地から湧き上がるような風が電線をビュンビュン鳴らし木々を揺らし吹き荒れた。寝ぼけた頭で脇をみるとモン太郎が私の腕枕でスースー寝息を立てていた。
モン太郎は先週始めくしゃみや涙目の風邪の様子なので病院に連れて行った。今までは籠に割合素直に入っていたが今回は四肢を頑強に踏ん張って梃子でも入らぬので仕方なく毛布にくるんで抱いていった。毛布が気に入ったのか病院の待合室でも診察台の上でもおとなしく居た。鼻炎と眼炎、ウイルスである。
薬が効いて4日ほどで症状はほぼ消えたが、今度はミーが似たような症状になった。ミーは以前の通院時に暴れて担当医が怖がったほどだから、モン太郎と同じく毛布にくるんで行った。やはりおとなしい。毛布にくるまれて抱かれると安心できるようだ。診察台でもおとなしい。年齢もあるかもしれん。予想を完全に覆して良い子ちゃんなのでついでに懸案だった腰から下の毛のカットを主治医にお願いしてみたら快諾してくれた。良かった良かった。
そんな状況でこの2週間が過ぎた。
九月にハチの急死があったが歳相応と考えればモン太郎やミーはハチよりずっと年上なので心配は尽きないのである。
モン太郎の寝息を聞きながらそんなことも脳裏によぎった。
唐突に新潟の瞽女の姿が闇に浮かんだ。唄と三味線で渡り歩く女の旅芸人・・・斎藤真一の絵だ。冬の瞽女たちの辛さはいかばかりか。そういえば日本海側から東北北海道はかなりの積雪らしい。私の故郷は太平洋に面して雪はほとんどなく、たまに積雪があると校長号令で全校生グランドで雪合戦に興じた具合だったが、雪国の辛さは大変だろうな。瞽女たちが冬の闇の中に消えて行った。
結構長く暴風は続いていた。
今朝はそんな風が雲を吹き飛ばし空は一点の曇りもない青空となった。刺すようなとまではいかないが寒い風が弱まりながら吹いている。おかげで巨木となった楓の落ち葉はすっかり吹き飛ばされて庭を覆った。午前中は庭と車庫の掃き掃除で終わった。まとめてビニール袋に詰め込み腐葉土にしようと考えている。
作農の母親のもと、貧困を極めた。