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師走はや時の流れを思ふ日々 陽清
山茶花のとぎれぬ垣根帰り道 陽清
窓ガラス磨く日和や年用意 陽清
洗濯機回して眠り冬の朝 夏生
冬の朝網揺らすクモ揺れており 夏生
ふるさとを懐かしみゐて師走かな 巴琴
登りきて関東一望秋の雲 巴琴
夢うつつ寝覚めに聞くや冬の雨 巴琴
師走はや時の流れを思ふ日々
はやくも師走。また、早き時の流れ。「はや」を頭にという案もあったが、師走のあとに入れたという作者です。さすがに手練れの作者です。頭に入れれば「はや」が心の急く動きを表す読みも可能ですが、慌ただしいという通り一片となる表現を避けて、時間の流れる速さに重きを置かれました。従って結句の「思ふ」が強調された、しみじみとした余韻を示します。
山茶花のとぎれぬ垣根帰り道
通院の帰りは歩いて40分ほどと作者。バスで帰れば見過ごす景色。ゆっくりと歩いて、道々の季節を丁寧に受け止めていらっしゃいます。そして健脚でなければ生まれなかった句です。花の乏しい季節ですが、山茶花は冬に向き合って健気に咲き誇っています。
窓ガラス磨く日和や年用意
さて、新年を迎える準備に忙しくなる師走ですが、作者は自室の窓拭きから。爽やかで綺麗な句ですね。窓ガラス、磨く、日和、がそれぞれ緊密に結ばれて、眩い光がすがすがしい窓辺に溢れている情景です。仕上げは新聞紙が良いのよ、と教えて頂きました。
洗濯機回して眠り冬の朝
早起きしてしまって、手始めに洗濯!と頑張ろうとしたら、洗濯機の回る音が心地よく二度寝に入る幸せな光景。幸せで楽しい句です。え?洗濯機の音が子守歌のように聞こえる・・・初めて聞く情景。
と、思ったら、なんと作者の自白によれば、夜中サッカーの試合に夢中になり「オレ~オレオレ~!」と夜陰に響く応援をしたかは知りませんが、寝不足での二度寝というオチがついた楽しい句でした。ま、彼女は句会最年少の「若手」、元気です。
冬の朝網揺らすクモ揺れており
朝、畑に味噌汁の具材を採りに行くと、チンゲン菜の畝に立てていた二本の棒の間にクモの巣がサッカーゴールのように張られていて、心優しい作者は取り払いもせずにそっとしておいてあげていたのです。すると、その朝、クモが巣の網の真ん中で身体を大きく上下に何度もゆすって彼女を迎えてくれたそうです。「さあ、どっからでもシュートしろ!」とクモが叫んだかどうかはわかりません。「揺れる」が二度使われていますが作者はそうしてクモに敬愛の情を示しておられます。面白い使い方です。
ふるさとを懐かしみゐて師走かな
故郷も遠くなりました。日々の中で思い出すことも少なくなりましたが、年の瀬を迎えるこの頃、ふと故郷の情景が浮かびます。たまに帰りたいよね~との声も聞こえます。そこから故郷の食材などに話が移り盛り上がりました。漁港のある故郷は良いよね~、これは一致。私の故郷では直径5センチ以上の浅利が出ます。
登りきて関東一望秋の雲
地元の低山ですが年々登るのがしんどくなってきていますが、頂上に立つと文字通り関東一望、富士も。
夢うつつ寝覚めに聞くや冬の雨
夢とうつつの境にふとぼんやり目覚めると静かな雨音が聞こえました。聞きながらまた眠ります💤
たんぽぽ句会も本年最後となりました。「楽しい!」そんなお声がかかります。楽しいのが一番!
では良いお年をと散会しました。
あ、あと、最後にこの句会の句集を出しましょうかと提案しました。各自の自選句50句。計200句なら形になります。記念として。まあ、来年の話で鬼さんにも笑われる話^^。