pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

たんぽぽ句会第十三回


冬帽子帰路の重たきリュックかな  陽清

 

捗らぬ写真の整理春を待つ     陽清

 

手順良き料理番組春を待つ     陽清

 

白梅を背に写る夫空青き      淡雪

 

やうやうとあけぼの染めぬ街の屋根 夏生

 

電線の遊べる鳥たちラの音符    夏生

 

じっと待つ凍えるサギや入間川   夏生

 

リック越し山の稜線春の立つ    夏生

 

ふきのとう初めて顔出す庭のすみ  巴琴

 

一面の輝く朝や雪化粧       巴琴

 

暴風に耐えに耐えけり梅の花    巴琴

 


今回は参加者2名。陽清さんはハウス内でコロナ発生のあおりを受け人と接する外出は禁止となりました。それでメールで投句をお願いしました。また、淡雪さんは第十回以降ご主人の在宅介護に入られて投句を中断されていましたが、今回久しぶりにメールで投句頂きました。有難いことです。

 


冬帽子帰路の重たきリュックかな

 

作者のお姿がくっきりと目に浮かびます。冬帽子。かわいいですね。そして買い物をして帰るのですが、「重たき」つまり食料品なのでしょうか、リュックに背負って歩きます。作者は八十代後半でいらっしゃるのですが背筋をしっかり伸ばして颯爽と歩くことを日常としていらっしゃいます。そんな作者の日常のお姿です。
さて私はそのリュックを背負っての買い出しというイメージに敗戦後の食糧難の時代の庶民の買い出し風景をつい連想。私はその後の生れなので写真とか映画でしか知りません。そこで、句会の場をお貸し頂いている「たんぽぽ」さんの管理人さんが部屋にいらっしゃるのでお聞きしました。私よりずっと高齢の方。すると作者の年齢ではまだ小学校低学年で買い出しは経験ないだろうということで、私の連想は誤りでした。ただ、そこで管理人さんの疎開のお話やらたんぽぽさんの小学校との連携のお話やらお聞きできました。

 

捗らぬ写真の整理春を待つ

 

写真・・・作者も写真の整理の段階に入られました。しかし・・・皆さんご経験がると思いますが、写真の整理は難しい。なにせ一枚一枚に思い出が蘇ります。懐かしい思い出が。それらは人生そのものを写している。今のデジタルフォトは勿論極めて便利なのですが、アルバムに丁寧に貼られた写真はそれだけ思いが深い代物なのだと思います。いずれ消えていくアルバム写真ですが。
「捗らぬ」がそんな作者のお気持ちを表しているように感じます。さすが手練れの良いお句です。

 

手順良き料理番組春を待つ

 

料理・・・この文字だけで料理に縁のない、食べるだけの私には疎外された世界。お手上げ状態。しかもTVを捨ててもう長いことTV自体見てない・・・ということで、夏生さんお一人に鑑賞して頂きました。「そうですよね、TV番組だから手際よくさっさと作らないとね。でね、巴琴さん、楽しいのですよ料理は。番組見てると調理法なんかも面白いですよ。春が近い嬉しさと相俟って楽しい句ですよね」あ~、しまった。私の母は私が小学生の時に男の子に裁縫だ料理だなんて教えるのは余計だと、今なら総スカンの発言を学校でぶちまけた女性・・・だから何もできない!それでいいのだ!とは内心に秘めておこう。春よ来い!


白梅を背に写る夫空青き

 

先ほど記しましたが、作者はご主人を在宅介護していらっしゃいます。それがどれほど大変か。しかし作者は介護のプロでした。いまはご主人の介護に専念していらっしゃる。終末医療の病院に回されたときに、病院から確認書みたいな文書が渡され、万一亡くなっても異議をださないなどという文言があり、彼女はきっぱりと捺印を拒否なさいました。その後、経管栄養の御主人の容態を見極めて自宅に引き取って介護。今では自力の口からの食事も可能になってきたとか。また、歩行も外で広い公園内を歩けるようになってきたとか。目を見張る介護ぶり。おそらくそのような状況で彼女も大好きな俳句をまた詠めるようになられたのかと推察します。そうして俳句を読むと、白梅の木、花、青空が作者の大いなる悦び、感動を表しているのだなと諒解します。愛情に裏打ちされて素晴らしい。


やうやうとあけぼの染めぬ街の屋根

 

作者は枕草子の世界を愉しみながら作っていらっしゃいます。いいですねえ、古典は言葉や表現の宝庫です。「やうやうと」を初句にもってこられて句の古色が味わい深く、時の推移も美しく感じられます。「だんだんと」とか「次第に」とかではつまりませんね。そして何と言っても「街の屋根」、俯瞰的であけぼのが染め上げていく街全体を見渡す大きな句です。まだ眠っている家庭も、起き出して仕事に行く準備をしている家庭も屋根が守りその屋根をあけぼののそれぞれのトーンが染めていることは普通気づかないのです。

 

電線の遊べる鳥たちラの音符

 

これは作者らしい愉しさ溢れる句です。ピアノもお好きな作者。以前、クモの巣のクモを詠んだ楽しい句がありましたが、同様の愉しさ。文句なし!良いですね!こんなに生き生きとして楽しい句も作ってみたいものです。

 

じっと待つ凍えるサギや入間川

 

こちらは打って変わって寂寥感溢れる素晴らしい句。身じろぎもせず、じっと長いこと川面を見つめるサギの姿に作者は気持ちを没入させていらっしゃいます。白の寂寥。美しい句ですね。

 

リック越し山の稜線春の立つ

 

大好きな山に登って息が切れながらリュックを岩の間に置いた。そのリュックの向こうの彼方の連山の美しさ。木々の枝先に芽生えの色を見て春の到来を「立つ」と表現なさいました。「立つ」は古来より「神立つ」という用い方があり、実は神聖な言葉でもあります。したがって、山も春も古来より神そのものの御姿です。作者の春への悦びや感動にふさわしい堂々たる御句です。

 

ふきのとう初めて顔出す庭のすみ

 

我が家にの庭に初めて蕗の薹が顔をだしました。たった四個でも感動します。へへへ、天ぷらだ!

 

一面の輝く朝や雪化粧

 

そのままの単純な句。

 

暴風に耐えに耐えけり梅の花

 

先日夜の暴風には驚きました。轟轟たる響きがほとんど夜通し。そして朝、庭の梅の花を見るとほとんど散っていません。すごい・・・そんな素朴な感情です。散るのは私の意志!という強さを感じます。梅の後に来る桜は、私はいつでも散りますよというような風情。好対照の梅と桜。

 

 

投稿された画像

ww

 www.youtube.com

w.youtube.com