pakin’s blog

主に創作を主体とします。ただし、人権無視の最たる原発問題や、子どもの健康や命を軽んじる時事問題には反応します。

短歌

*過去の自作のヘボ短歌を一部まとめました。記録用です。


2016-05-06
五月の節句に   短歌


      今はただ星の光に花落ちて
            耳に残るはさざなみの音
 

      さざなみの寄せては返す春の浜
            黒き瞳のまぶしきを知る

     
      夕暮れて道の標も知らざりき
            幼き我の歩む影のみ


      波の底きらめく砂と青空と
            潜りし我のすべてなりしや


      今もただ夜ごとの夢の通い路に
            海鳴り遠くむせび聞こゆる


2017-09-23
短歌五首
 

柿の葉の色づき散りぬ庭の上

     早に秋染む幾たびぞ逢ふ

 
オルフェウスかすかに聞こゆ木立より

     グレイに沈む奥武蔵の里


朽ちる葉もくるくる回り地に落ちて
         山は楽しき舞踏の囁き


レクイエムそは歓喜の調べなむ
        金木犀の香り満つ朝

 
我ともに老いてゆきけり秋の朝
        眠る老猫寝息やすらけく


2017-11-22
短歌 信濃追分 堀辰雄文学記念館


残照の消失点に進むなる信濃追分晩秋の鉄路

人なくも温かき満つ文学館信濃追分木枯らしも風

和漢洋書架に整然と並びぬるその書庫ながむ堀の眼差し

追分の枯れ葉の家を住処とし余命に臨む枯れ枝の身体

優しきは替えがたきあり堀辰雄そは死と戯るほどに強きか

未だなほ読み接がれてやありぬらん記帳に連なる氏名続けり

          *

小雨ふる道に消えゆく影さへも
     懐かしからむ待つ宵ののち


もの思ふ心も知らず流れゆく早水に浮かぶうたかたの夢
 
雨やみのしじまの夜のもの思ふこころも凪て有明の月
 
空蝉の濡れそぼつらん秋霖の昏き夜道ぞ思ひ捨つべきや
 
雨やみて霧に沈みぬ林にはかっこうの声とほく響きぬ
 
月も日も蘇る宵と思ふべし面影浮かぶ渦潮のごと
 

          *

あけぼのをまとひ降りくる夢を見ぬ
          秋終わりぬるも冬にみんとぞ

庭にゐて秋月之夜のかそけきに
          葉擦れの音かな声のするやう


雨上がる朝の光の紅葉の静かな秋の時も過ぎゆく

 
窓辺より流れ溢るる大銀杏眠れる母も染まりて居りし

 
聴こえしや銀河の音の囁く夜
          雨だれしげき朝の目覚めに

 

樹木希林逝く
柿の実の熟すを間近に見ておれば
      つくつく法師のひとり鳴きおり

降りしきる秋雨の宵ただひとり暗渠の音のさみしきを聴く

        *
                                                                 
橘を守(も)る人ありとや聞こえなん
      夢の玉藻も人も非時香果(ときじくのみ)


2019-01-12
病院短歌
 
丁度3年前、2016、01、12 に書いたものを若干改稿したものです。
 

    午後4:45暗く汚れた通勤路
          人ごみの脇ホームレス蹲り
 
年末に消えたホームレスの婆さん・・・黒光りした皺くちゃのポパイそっくりの顔でたまに近くの安いカフェで煙草をふかしていた。
あのイカレタオリンピックのためにどこかに「監禁」されているのか。きちんと丁寧に折り畳んであった布団毛布は近くの店員に放り投げられやがて始末された。その毛布や布団の姿はやがて我らが姿である。
 
 
    午前0時救急に運ばれし泥酔の
          女子手当する若き看護師
 
今どきは若い娘らが深夜都会の真ん中で泥酔する姿は普通だ。なに?女も同権だ?阿呆。
医師は救急なければ寝てて良い。看護師介護士は夜勤の場合仮眠1~2時間で16時間労働である。午後5時より明朝9時半。いくら手当がつき、翌日休みとはいえ、これは余りに過酷な勤務であろう。薄給。
そんな人たちー看護師介護士に限らずーの過酷さの上に私たちの生活がある。
 

    午前3:43オリオン輝く空の下
          ベッドを巡る介護士の影
 
前に同じ。
介護士は患者の身の回りの世話一切を引き受けて精魂使い果たし勤務を終える。週1回の夜勤でもきつかろう。若ければそれでもなんとか務まる。60歳を超えた介護士の女性は両膝を手術していた。その手術跡を見せられてしまった。
それでも生き抜かねばならない。
激しい肉体労働であり且つ愛情を含めた高い精神性を試される仕事だ。
社会は彼ら彼女らの過酷を知らねばならない。それを無視する社会は滅亡する道しかない。
しかも戦前の医療現場の軍隊の如きヒエラルキーそのままである。ふざけんじゃねえよ。無反省な戦後政治は遂に戦前回帰に戻りたがっている。
 

    午前8:30扉を開けて帰途に就く
          光風清浄刃のごとく
 
私としては疲労困憊後のその開放の瞬間が一番心地よい。
冷気と眩い朝日がこの汚れた街にもひと時の清浄をもたらす。

          *

いつくしま白百合の花夜床にも愛しと匂ふ妹ぞかなし

          *

Nevermore 夢のまたゆめ夢のゆめ
          見果てぬ夢のゆめのごとくに
 
長崎の坂の小路の卒塔婆
          花たゆるなく蝉しぐれふる
 
長崎と五島をめぐる旅すがら
          寄せ来る波もいのちとぞ見ん
 
オルフェの歌かすかに聞こゆ木立より
          グレイに沈む奥武蔵の里
 
月も日も蘇る宵と思ふべし
          面影浮かぶうず潮のごと

         *
 
波の底きらめく砂と青空とすべてなりしや幼き我は

夏空に向かふ我あり幼き日プールの底よりあふぎ見てをり

          *
 
1 柿の実の熟すをま近に見てをればつくつく法師のひとり鳴きけり 
「叙景が分かりやすい。景が見える」
3 降りしきる秋霖の夜のひとり寝に暗渠の音のはげしきをきく
「淋しさを強く感じる。暗渠、がいい」
4 雨やみて霧に沈みぬ林にはかっこうの声とほくこだます
「このような叙景は深く感じられる。
5 残照の消失点に突き進む信濃追分晩秋の鉄路
「いい」
6 優しきは耐えがたきあり堀辰雄そは死と戯れしほどに強きか
堀辰雄への思いを感じる」
7 我ともに老いてゆきけり秋の朝眠る白猫息やすらけし
「我とともに、とすべき」
「白猫に艶めかしさを感じる」
8 白釉の円き素肌のひんやりと花の熱きも湛えてありなむ
「実感がある」「不思議さを感じる」

10 求めきて花うるはしみ頂にましろき雲の湧きいづるかな

13 尋ぬればきみ振り向きてわれにいふ吾亦紅とは高原のひと
「吾亦紅、好きです」
14 木々の葉の降りしきるごと告げたしや六道を迷ふ影のわれゆゑ 
「六道をまよふ、の意味が深い」
15 子殺しのさきはふ国のまなこらは闇に隠れぬ冬ごもりをり
「闇に隠れぬ、のその隠れた扉を開けてください」

         *

予報では俄雨とか毎度裏切られ
   腹が立つ今日は土砂降り記念日

          *

雨だれの音しげくなる山ゐにも燕の親も巣に帰りしか

コロナとてマスクの上の目の険し人は要らぬと籠りゐるのみ

雨に打たる庭の木立もうれしとぞ緑つややかに瞳のごとし

花もあれこのひと時も生まれぬる命守るべし心ありせば

鯉のぼり見ぬ世となりしこの無慙子らの瞳はいずくにやある

 
         *

夢に見しうつつに魅せて散る花のけふの限りやまた会ひてしがな

 愛されるのみに生まれ出で鯉のぼり愛する人に育てよと立つ

生まれ出で五月の風に染められよ空の青さも水の清さも

生まれては四苦も八苦も穢れても愛するのみに救われてかし

親はただ親でありてぞ救われぬ鯉のぼり立て翻るさま

なべて夢うつつも夢と近づけばけふあることの奇跡とぞ知る

          *

    五島の教会にて


悲しみを知るものありやこの国の悲しみにゐて八月の雨

 
祈りとは捧げるものなり見せるに非ず耐え抜く者の祈り尊し


燃ゆる川燃ゆる木立の燃ゆる空広島長崎灰燼の夏

 
轟音に窓外見ればきのこ雲海軍病院の父は虚脱す
      (呉停泊中撃沈され奇跡的に同僚に助けられた父の話より)

祈りさへ忘れ五輪や疫病の猖獗無様極まる國よ

 
自殺せし殺されし子の魂よ憐み給へ生ける大人を


祈ることそれのみの夏祈れよと蓮は咲くなりこの夏のため

           *

我が心帰り来たれやこの時に緑なす山碧き風吹く


緑なす風も過ぎけり白き風あはむと歩く野辺山道を
 

花野風身にまといせば消えてなん我が穢れたる身も心をも

風の中消ゆればさぞや憂からざらん透き通る夢くれなゐの風

 
稲穂波寄せくる前に佇めば幾重も連なる奥武蔵かな


この歳で花野を夢としりたればやうやく尋ぬ西行の道

           *

日に流る影はありしや
     寄り添いし吾亦紅揺れ晩夏の風立つ


老いゆくも忘れ遊びぬ旅のはて 
     鉄路日に濡れ錆も赤色

 
我を呼べいつものごとく
     魂の声聞く潮に浜木綿


月下美人今みたびの花咲かせ
     急ぎいくなよ我残してや

            *

急ぎきて息つくいまや歳々の大年のすゑ西日さすかな

静かなる夜の遠くの何のゆめ風の便りも冬の山音

ゆふぐれの金色の空山の端の越えゆく鳥の影をふと見し

忘れじの面影浮かぶゆめの日々大つごもりの灯りともして

今更にさらぬ別れのなくもがな今更にます思ひ止むなし

 

 

飯豊山を背に